夢があるって素敵だね
アカデミーで、いつも通り木陰でのピクニック昼食を終えるとベリアルとゴンザレスとバニラちゃんと一緒に魔術科の広場に向かう。
バスケットにご機嫌で入っていて激かわだね。
ぐふふ。
堪らないよ。
昨日は慌てて帰る事になっちゃったから今日の昼休みに行く約束をしたんだよね。
偉そうな貴族より強くなる為に頑張っている平民の皆の為に協力したいけど……
今の人間は魔力がかなり弱くなっているからね。
あと、百年もすれば人間はもう魔力を使えなくなっているかもしれないね。
「あ、ペリドット様! 昨日は大丈夫でしたか?」
マリーちゃんとジャックが駆け寄ってきたね。
「うん。昨日は慌てて帰っちゃってごめんね。どうかな? 魔術は使えそうかな?」
「あぁ……それが……」
マリーちゃんが暗い顔になったね。
「何かあったのかな?」
「……はい。あれから皆で練習したんですけど……」
「うん。どうだった?」
「昨日いた人は少しですけど魔術を使えるようになってきて……でも、いなかった人達はなかなか上手くいかなくて。もう一度皆が揃っている今、同じ事になっちゃうけど……教えてもらう事はできますか?」
「もちろんだよ。昨日いたジャックはもう魔術を使えるようになったんだね。すごいよ」
「はい。すごく一生懸命でしたから。それに、ペリドット様に魔塔で働きたいっていう夢を応援してもらえたのが嬉しかったらしくて、前向きに頑張れているみたいです」
「そっか。良かった。他人の為に頑張れるのもすごい事だけど、自分の為に頑張るのも大切だからね。自分の人生だから自分の夢を追いかけて欲しかったの」
「ペリドット様……わたし……アカデミーに来てペリドット様に出会えて本当に幸せです」
「……マリーちゃん。わたしもマリーちゃんに出会えて嬉しいよ」
「えへへ。わたしにも夢ができたんです」
「そうなの? 教えて欲しいな」
「『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に出場したいんです。今はまだ全然ダメだけど……頑張ってペリドット様と一緒に……最後の思い出を作りたいんです」
「うわあぁ! 素敵だね。わたしもマリーちゃんと一緒に出場したいよ」
「……あと、二ヶ月しか一緒にいられないなんて悲しいですけど……だからこそ楽しい思い出を作りたいんです」
「ありがとう。すごく嬉しいよ。あ、そういえば、マリーちゃんとジャックは何の魔力があるのかな?」
「はい。わたしもジャックも風属性なんです。親戚だからかな?」
「へぇ。二人は親戚だったんだね。だから初めて会った時にジャックを『お兄ちゃん』って呼んでいたんだね」
「え? あ……はい」
今は『ジャック』って呼んでいるっていう事は二人は付き合っているのかな?
マリーちゃんとジャックが真っ赤になっているね。
すごく良い感じだよ。
見ていてニヤニヤしちゃう。
うーん。
マリーちゃんとジャックの先祖が風を使う魔族だったのかな。
あれ?
だったら、マリーちゃんとジャックの親にも魔力があるはずだよね?
「マリーちゃんとジャックの親戚には他に魔力がある人間はいないのかな?」
「あ、それは……親が魔力検査で『魔力あり』とはなったんですけど、実際に魔術は使えなくて。魔力検査後に属性検査をするんですけど……やっぱり属性検査が間違っていたのかもしれませんね」
「なるほどね。今までの属性検査は間違った結果が多かったからね」
「わたしもジャックも風の力っていっても弱い風が出てくるくらいで……でも頑張って練習して『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に出られるようになりたいです」
「うん。一緒に頑張ろう」
魔術で戦うっていうよりは魅せる感じらしいからね。
観客に喜んでもらえるような演出を考えたらポイントが高そうだよね。