バニラちゃんは素敵な母親だね(2)
今までは、わたしの中に変態的に息子を愛している『遥か昔の吉田のおじいちゃんの息子さん』の魂があったから親の欲目で分からなかったのかもしれないけど、一瞬ノーマルになった事で気づいたんだよね。
でも、吉田のおじいちゃんもおばあちゃんもそんな事は言っていなかった。
二人もベリアルがかわいすぎてその事に気づいていないのかな?
あれ?
バニラちゃんがフヨフヨ飛びながらわたしに抱っこされに来たね。
フワフワで柔らかくて温かくて気持ちいいよ。
(ふふ。ペルセポネも温かいわよ?)
あ、バニラちゃん?
やっぱりまだ神力があるの?
(……え? あぁ……えっと……そうかしらねぇ? あはは……)
……?
どうかしたの?
(……まぁ……わたしはあなたで、あなたはわたしだから……いいわよね?)
え?
何が?
(いや……だから……その……ペルセポネの神力を借りちゃったっ!)
……?
え?
借りちゃったって?
そんな事ができるの?
(元々ひとつだったからペルセポネから力を借りる事ができるようね。借りるって言ってもわたしには神力が無いから返せないけれど。ちなみにペルセポネの考えている事は筒抜けみたいよ? 触れていなくても全て聞こえてくるわ)
……全て?
わたしの変態の心が全部筒抜けっていう事?
(ふふ。そうね。ペルセポネにはわたしの心が聞こえていないようね)
うん。
何も聞こえてこないよ?
(元々わたしは心を聞かれないように暮らしてきたからかしらね? 何か考える時には今以上に気をつけて。おばあさんもウラノスもゴンザレスも心を聞く力があるから。……でも、だいぶ心を聞かれにくくできるようになってきたわね。さっきまで心で思っていた事もわたし以外には聞こえていないようだし)
わたし、今まではおばあちゃんに秘密なんてほとんどなかったのに……
悪い事をしている気分だよ。
(……仕方ないわ。ペルセポネには強すぎる力があるから。それは知られない方がいいのよ。ガイアの持つ力と同等の力があるなんて……下手をすれば次期神候補にされて身内で争う事になるわ)
……うん。
そうだね。
わたし……思ったんだけど、もしかして遥か昔のバニラちゃんは吉田のおじいちゃんとおばあちゃんより強かったんじゃ……
(……そう……かもしれないわね。戦った事はなかったけれど……あの容姿でなければウラノスの次の神になっていたかもしれないわね。でも、わたしは創られた人格だから。ベリアルの魂の方は闇の力を使いこなせてはいなかったし)
闇の力を持つ神様……か。
(そうね。不思議だわ。遥か昔にはこう思っていたの。『あまりに力が強すぎて化け物の容姿で産まれてきた』と。でも、その考えだとウラノスやガイアが美しい天族の容姿で産まれてきた事に矛盾が生じるの。ハデスは闇に近い力だけれど美しく産まれてきたし。タルタロスのコットスは怪力ではあるけれど神力はほぼ無いように見えたわ? 一体何があると魔族に近い容姿になるのかしらね)
バニラちゃんにも分からないんだね。
吉田のおじいちゃんとおばあちゃんにもそれは分かっていないみたいだったよ。
(ガイアは……産まれてきた子を何度も手離さなければいけなかった。そして、手離した子を今でも愛し続けているのね。わたしもそうよ。ベリアルをずっとずっと……愛してきたの)
うん……
母の愛……だね。