昨日の涙はなんだったの~後編~
(あぁ……いらない記憶を消しちゃえばいいんじゃないかしら?)
ええ!?
そんな大変な事をサラッと言っているけど、それって平気なの!?
(……ゼウスと遊んでいた幼い頃の記憶とかなら消してもいいんじゃない?)
……確かに鼻の下を伸ばしながら『ペルセポネは将来巨乳になるんだよぉ? 』って言っていた記憶はいらないけど。
やっぱり消しちゃダメだよ!
あれだって大切な記憶なんだから!
……いや、大切……なのかな?
(困ったわね……ベリアルの中には戻れないし。あ、そうだわ! あれがあったわね。少し待っていてね)
え?
少し待つって?
ちょっと……
え?
わたしの中からいなくなった?
「おい……離せ。変態め!」
ベリアルがいつも通りに戻っている!?
「ぐふふ。離さないよ! だってわたしは変態だからねっ!」
って、わたしもしっかりいつも通りだよ。
「開き直るなよ! 離せっ! ん? オレ、何で袋を持ってるんだ? あ、もしかしてお菓子が入ってたりして! どれどれ? なんだ、ハンカチか……うぅ……お腹空いた! お菓子が食べたいっ!」
ん?
ベリアルはハンカチを持ってきた事を忘れていたのかな?
記憶が混乱しているのかもね。
「ぐふふ。堪らないねこりゃ。お菓子が欲しかったら『ぺるみ大ちゅき』って言うんだよっ!」
「くっ! 嫌だ……それだけは絶対に嫌だ……」
「ぐふふ。嫌がるヒヨコちゃんも超絶かわいいよ」
……あれ?
今、わたしの中に『ベリアルに吸収されなかった魂』はいないんだよね?
何で変態のままなの!?
「ふふ。まあ、深く考えないのよ?」
……?
え?
毛玉の姿のハデスのぬいぐるみが動いている?
ハデスが毛玉の中に入ったの?
でもハデスなら自分で毛玉の姿になれるからぬいぐるみに入る必要はないよね?
ん?
皆の動きがとまっている?
「えっと……誰?」
「ふふ。わたしはあなたで、あなたはわたしよ?」
「はぁ!? どういう事!?」
ベリアルに吸収されなかった魂!?
「使っていないみたいだから借りちゃったっ!」
「ええ!?」
第三地区に置いてあったベリアルが粘土で作った『毛玉のハデスぬいぐるみ』だよね。
確かに使ってはいなかったけど……
「ふふ。これならベリアルのお世話もできるし、あなたの記憶も消えないし素敵よね」
「ええ!? ちょっと待って! わたし変態のままなんだけど!?」
「あぁ……オプション……?」
「オプション!? 何の!?」
「ふふ。突然あなたがノーマルになったら人間が怯えるから『変態』はあなたと半分こしたの」
「はぁ!? 半分こ!? 今までと変わらないんだけど!?」
「ふふ。変態度が上がったからかしらね」
「変態度が上がった!?」
「仕方ないのよ。ほら、昨日わたしとあなたが別になった時にあなたから変態が消えたでしょう? それでさっきまた戻ったから……あなたの中のノーマルな心が変態のわたしの心を追い出そうとしたのよ。そして、わたしの変態が勝ったから増量したの。ふふ」
「ふふ。じゃなあぁぁぁあい!」
「変態の半分はもらっていくからね? じゃあ、時を動かすわよ? 第三地区の皆にはわたしからサラッと話しておいたから後はよろしくね」
「ちょっと待ってよ! よろしくって何を!?」
「うふふ。わたしはあなたで、あなたはわたしよ?」
「はぁ!?」
もう何が何だか分からないよ。