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じいじとルゥの眠るベット~後編~

「お前達……もう泣くな。わたしはここにいるのだからな」


 ハデスがヴォジャノーイ族のおじちゃん達に話しかけているけど、じいじへの気持ちが溢れ過ぎて全然聞こえていないみたいだね。


「前王様……いつまでも尊敬しています」

「前王様ぁ!」

「うぅ……」


 じいじの身体に一生懸命話しかけているね。


「……まるで自分の葬儀を見ているようだな」


 ハデスの気持ちはよく分かるよ。

 不思議な感覚だよね。

 あれ?

 ハデスがじいじの手を、隣に眠るルゥの手に重ねた?


「ハデス?」


「あぁ……これでルゥも寂しくないだろう」


「ハデス……うん。そうだね……ありがとう」


「ありがとう? なぜ礼を言うのだ?」


「うん……だって……嬉しいから。それに、ルゥの顔が嬉しそうに見えるよ……」


「嬉しそうに? 不思議だな。魂が無いからもう動けないのに……確かに笑っているように見える」


「うん。ずっと守って、愛してくれたじいじが隣にいてくれて嬉しいのかな?」


「ペルセポネ……ルゥだけではない。前王の……『じいじ』も幸せそうな顔をしているようだ」


 ハデスと微笑み合うと、ばあばが嬉しそうに話し始める。


「二人は天族の姿になっても変わらないのね。見ていて嬉しくなるわ?」


「うん。ずっと仲良しだよ? あ、今日って……ピーちゃんは来なかったんだね」


 吉田のおじいちゃんはお父様に呪いを解いて欲しいみたいだから、わたしは黙っていないとね。

 早く気づいて欲しいけど、今は溜まりに溜まっている仕事を天界で片付けているんだよね。

 まぁ、お父様の事だからこの場にいても気づかなかっただろうけど。


「わたし達は夜にグンマに帰るから、明日の朝一緒に来るわ? 魔王の宴を楽しみにしていたわよ? わたしとブラックドラゴンで明日の朝から動物病院に連れていくって話になっているから長くいられるわ?」


「そうなんだね。それなら野田のおばちゃんも、ピーちゃんがいなくなったって心配しなくて済むね。協力してくれてありがとう。助かるよ。ばあばもご機嫌だね。良い事があったの?」


「明日はヴォジャノーイ族のお酒を飲めるからね。ふふ。ずっと楽しみにしていたのよ?」


 ばあば……

 お酒を飲んで暴れないよね?

 ドラゴンの姿で暴れられたら……

 不安になってきたよ。


「あ、明日はね? 冥界のケルベロスも少しだけ来てくれるんだよ?」


 第三地区の甘いお菓子を楽しみにしているんだよね。

 ケルベロスはお菓子が大好きだから。


「あら? そうなのね。種族王達も全員参加するのよね」


「うん。明日は賑やかになりそうだね」


「そうね。天族の家族も来てくれるんでしょう?」


「うん。お父様は、今まで溜めている仕事を全部終わらせないと参加させないってお母様に言われて……泣きながら仕事をしているみたいだよ?」


「ふふ。大変ね。魔王は明日の宴を知らないのよね?」


「うーん……気づいているけど、気づかない振りをしてくれている感じもするけどね」


「いいじゃないの。初めて家族揃ってお祝いしてもらえるんだから魔王も嬉しくて、そわそわしちゃうわね」


「うん。ずっと夢だったの。群馬ではわたしが一歳の頃にお父さんが行方不明になったから。お父さんの誕生日がくるたびにおばあちゃんとケーキを作って……ローソクを……」


 ダメだ……

 涙が出てきちゃう。


「これからは毎年お祝いできるわね。もう寂しい思いをする事もないわ」


 ばあばが優しく抱きしめてくれる。


 そうだね。

 これからは寂しい思いをする事はないんだ。

 群馬では寂しかったけど、これからはずっと楽しく過ごせるんだ。

 ずっとできなかった親孝行をいっぱいできるんだね。

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