うさちゃんとハデス(3)
「ふふ。素敵な貝殻があったのかな? うさちゃんは、かわいいね……でも……寂しいだろうね。母親の魂がベリアルに吸収されて……」
わたしも最後に少し話しただけなのに、すごく悲しいし……
うさちゃんはもっと辛いよね。
「子うさぎは、母親の魂がベリアルに吸収されてもベリアルを嫌っているようだ。それは母親の魂が完全に吸収されて消えたという事だろう。娘のように守ってきたペルセポネの側にいたい気持ちも分かるが……子うさぎは独占欲が強いからな。これからも揉め事は起こるはずだ」
ハデスの言う通りだね。
うさちゃんは少し口が悪いからケンカになっちゃうんだよ。
「確かにうさちゃんはベリアルを嫌いみたいだよね……今日のアカデミーでベリアルが人間から嫌がらせをされないか心配だよ。今日は違う誰かにヒヨコちゃんになって付いてきてもらおうかな?」
「この世界の補正力が人間には効きにくくなったのは事実らしいが、ベリアルは傷つきやすいからな。しばらく第三地区にいさせて様子を見るか。だが、今日は天界のデメテル達はグンマに行く為に仕事を片付けるのが忙しいはずだ。ヨシダさんかおばあさんにでも付いて行ってもらうか?」
「ええ!? 吉田のおじいちゃんは講義中に変な事を始めそうだし、おばあちゃんはわたしが講義中に遊んでいるとお説教されちゃうから……」
この二人だけは避けたいよ。
あ、今の心の声を聞かれていそうな予感がする……
「では……わたしが毛玉の姿になって付いて行くか?」
それはそれでハデスが気に入らない人間を皆殺しにしそうで心配なんだよね。
でも、そんな事は言えないから……
「えっと……そうなんだけど……うーん……」
何て言って断ればいいかな?
「ミツケタゾ! サイコウノ、カイガラダ!」
え?
うさちゃんが波打ち際で喜んでいるね。
「何!? どれだ!? わたしのこの貝殻よりも美しいのか!?」
「ホラ、ミロ!」
「……! これは……確かに美しいが……だが……認めたくない……」
「フフフ。ハデスハ、マダマダ、アカゴ、ダカラナ。オレニハ、カテナイ、ダロウ」
「いや、まだ他にもあるはずだ! ペルセポネに選ばれるのは、このわたしだ!」
「エラバレル、ノハ、オレダ」
はぁ……
この二人はずっと張り合っているよ。
でも……
「ふふ。なんだかお父さんと息子みたいだね」
砂浜で遊んでいる仲が良い親子みたいだよ。
「ええ!?」
「エエ!?」
嫌がる声まで揃っているね。
「あはは! すごく仲良くなれたりしてね」
「あり得ない!」
「アリエナイ!」
「あはは! すごく息が合っているよ?」
「うぅ……子うさぎと? 最悪な気分だ」
「ウゥ……ハデスト? サイアクダ」
「そんなに嫌なんだね……」
「オレハ、カイガラヲ、サガシテクル。ハデス、ヨリモ、オレノ、ホウガ、ペルセポネニ、フサワシイ」
うさちゃんが波打ち際に戻って行ったね。
「やれやれ。子うさぎにも困ったものだ」
「ふふ。あんな風に言ってはいるけどハデスの事は認めているんだよ?」
「……とてもそうは見えないが」
うさちゃんは口が悪いから誤解されやすいんだよね。