うさちゃんとハデス(1)
「……こら、子うさぎめ。何をしている」
……?
もう朝かな?
ハデスの方が早く起きるなんて珍しいね。
起きないといけない時間かな?
まだ眠いよ……
「コノママ、ネムリツヅケロ。ペルセポネハ、ワタサン」
「……ついに決着をつける時が来たようだな」
……この二人は、またケンカをしているんだね。
今度は何が原因なのかな?
「ソトニ、デロ」
「ペルセポネを巻き込めないからな。子うさぎめ、今日こそどちらがペルセポネにふさわしいかを思い知らせてやる」
これは、まずい事になりそうだね。
とめないと……
「ハデス……」
あれ?
もう行っちゃったのかな?
「ハデス?」
あ、やっぱりいないよ。
今、何時?
うーん。
まだ朝の四時だよ?
もう少し寝たい……
でも、あの二人を放っておいたら大変な事になりそうだよね。
「子うさぎめ。これでどうだ!」
「ハデスハ、アカゴ、ダナ」
一体何で戦っているんだろうね?
外への扉を開けるのが怖いよ。
まさか『闇の力』と『闇に近い力』で戦っているんじゃないよね?
だとしたら幸せの島が消滅しちゃうよ。
怖いけど……
よし、開けるよ……
え?
何これ?
「子うさぎめ。どうだ! この貝殻は珍しいのだ!」
「フフフ。コッチノ、ホウガ、ピンクデ、カワイイ」
……貝殻集めをしているのかな?
飼い主とペットが砂浜で遊んでいるようにも見えるね。
でも、遥か昔の吉田のおじいちゃんの息子さんの魂はベリアルに戻ったから……
どうして、うさちゃんはわたしの側にいてくれるのかな?
「えっと……おはよう。何をしているのかな?」
さすがに仲の悪い二人が砂浜で遊んでいるわけじゃないよね?
「ペルセポネ、起きたのか。今、ペルセポネへのプレゼントを選んでいたのだ。わたしの方が立派な貝殻を……ほら、この貝殻は美しいだろう」
「ハデスハ、シュミガ、ワルイ。オレノ、ホウガ、キレイナ、カイガラダ」
貝殻をわたしの為に?
「どうして急に貝殻を?」
「子うさぎがペルセポネへのプレゼントだと言って貝殻を拾いに行っていたのだ。だが、わたしの方が美しい貝殻を見つけたぞ。ほら、どうだ?」
「オレノホウガ、カワイイ、カイガラヲ、ミツケタ。ペルセポネ、ドッチガ、スキダ?」
どっちを選んでも揉めそうだね。
困ったな……
「両方素敵で選べないよ。すごくかわいいよ。ありがとう……あの……うさちゃん? どうしてわたしの側に残ってくれたの? 遥か昔のベリアルが生み出した心はベリアルに吸収されたのに」
「……ソウダナ。モウ、イナクナッテシマッタ。オレノ、ハハオヤ……ダガ、オレハ、ペルセポネヲ、マモリタイ。アカゴノ、コロカラ、ズット、マモッテ、キタ、カラナ」
「うさちゃん……本当はベリアルの側にいたいのにわたしに気を使っているのかな?」
「ソレハ、チガウ。オレハ、アイツガ、キライダ」
本当に嫌いみたいだね。




