最後の会話(4)
わたしが?
あなたならできるわ?
あなたにしかできないの。
頼めるかしら?
……これでわたしとベリアルは完全な別人になるの?
そうね。
あなたの魂はわたしだったけれど……
あなたの中には、あなたの魂がいるわ?
それは……?
これ以上は話せないの。
あなたの為でもあるわ?
……もう、あなたと話せなくなる?
そうね。
最後に……あなたが見てきたベリアルとの世界を見せてくれないかな?
……確かに今ならあなたの記憶に害は無いけれど。
かなり辛いはずよ?
あなたが生きた証をわたしの中に残したいの。
……え?
あなたは生きていたから。
創られた母としての存在でも……あなたは生きていたから。
わたしだけは絶対にあなたを忘れない。
……ふふ。
あなたらしい考えだわ。
これだけは教えておくわね。
いつかあなたが全てを知った時に傷つかない為に……
あなたの魂はわたしの魂だった。
でも今はあなたになった。
わたしはそれを恨まないし、これで良かったと思うの。
あなたは賢いわ。
いつか自分でこの答えに辿り着くかもしれないわね。
わたしは……やっとあの子の中に帰れるわ。
確かにわたしにも自我はあるけれど……
本来はもっと早くにこうなるべきだったの。
でも、あの子はずっと不幸だったからそうはなれなくて。
もうわたしには自我が無くなるけれど……
これでやっと、あの子の中であの子を守れるわ?
はぁ……
やっと肩の荷が下りたわ。
あの子の幸せな姿を見られる日が来るなんて……
本当にありがとう。
……ずっとわたしの中には、いられないの?
こんなの悲しいよ。
悲しくはないわ?
この日を待っていたの。
あの子が心から幸せになれる日を。
わたしは母親……あの子を愛しているの。
虚しくはない……
いつかは幼子は母親から飛び立っていくものだから。
これでいいの。
……本当は悲しいんだよね?
言っていいんだよ?
言うべきだよ。
ふふ。
本当にあなたには敵わないね。
……消えたくないわ。
これからもずっとあの子を見ていたい。
でも……
わたしがあの子の中に戻ればあの子は今よりも安定するはずよ?
これが母親としてあの子にできる最後の事なの。
最後……
そんなの悲しいよ。
あ、そうだわ。
あなたの魂がわたしの魂だから魔族が服従したのは事実よ?
でも、魔族も遥か昔からかなり進化したわ。
いつまでもわたしの魂には服従しない。
魔族が、あなたを好きだからあなたを愛してくれているのよ?
そこを誤解したら魔族に失礼でしょう?
自分に自信を持って。
それから……
あなたの凄まじい力は隠しなさい。
おばあさんにさえ知られてはいけないわ。
今おばあさんが知っている以上の力をあなたは持っているから。
おばあちゃんにも隠す?
あなたはとても素敵な女の子よ?
素敵……?
……わたし達は親戚なのね。
わたしはウラノスの子で、あなたはウラノスのひ孫……
あなたの中から幸せそうなヨシダの姿を見られたわ。
ウラノスはずっと後悔していたの。
あの子を捨てた事を……
あの子の側に魔族として……ずっと一緒にいてくれた。
子を捨てた罪は絶対に赦せないけれど……
ウラノスは……立派な父親だったわ。
……うん。
吉田のおじいちゃんは本当に素敵な人だよ。
……いつまでも、そのままでいてね?
そのままの優しいあなたでいてね?
……消えて欲しくないよ。