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最後の会話(3)

 矛盾していると言いたいのね?

 でも、わたしにも心があるの。

 嫌いなものは嫌いだし、赦せないものは赦せないわ?


 ……うん。

 わたしも、群馬でおばあちゃんを魔素で攻撃した大天使が大嫌いだよ。

 イナンナに酷い事をした大天使も、ベリアルを傷つけた天族も絶対に赦せないよ。


 それが生きるという事よ。

 全てを赦し愛するなんて無理でしょう?

 大切な人を傷つけた相手を赦す事なんて不可能だわ?

 綺麗事だけでは生きていけないのよ。

 

 ……ベリアルを愛しているんだね。


 ええ。

 その為に創られた存在だから。

 でも……わたしは心からあの子を愛していたわ?

 愛に飢えていたあの子が愛おしくて堪らなかった。

 

 これから、どうするの?

 わたしとひとつになるの?

 それとも……わたしを消してあなたがこの身体を使うの?


 ……あなたを消す事はないわ?

 わたしといるよりあなたといる方があの子も楽しそうだし。

 あの子のあんなに楽しくて幸せそうな顔を久しぶりに見たわ?

 

 久しぶりに?


 まだこの世界に捨てられたばかりの頃は幸せに暮らしていたのよ。

 でも、人間が知恵をつけ始めるとそうもいかなくなってね。

 わたしの出番はこれで終わりのようね。


 え?

 それって……?


 あの子もずいぶん強くなったわ?

 わたしが吸収される日がきただけの事よ。


 ……そんな。

 ずっとわたしの中にいて欲しいよ。


 それはできないわ?

 前に『魂はどこから来たのか』おばあさんは教えてくれなかった。

 覚えている?


 ……うん。

 わたしが傷つくからって教えてもらえなかった。


 天界の秘密。

 いえ、違うわね。

 ガイアと……

 これ以上は言ったらいけないわね。

 ただ、これは神であるゼウスでさえ知らない秘密。

 あなたは知ってはいけない。

 もしあなたが知って、心を聞かれてその真実が外に漏れたら大変な事になってしまうから。


 ……?

 大変な事に?


 でも、これだけは言えるわ?

 生き物の記憶は全てを覚えてはいられないの。

 古い記憶は新しい記憶に上書きされていくわ?

 もちろん、古い記憶でも消えない事もあるけれど……


 大切な記憶……?


 そうね。

 あなたにはペルセポネとルゥとルミの記憶があるわ?

 わたしがあなたと共にいてこれ以上記憶が増えれば……ルゥやルミやペルセポネの頃の記憶が消えてしまうかもしれないの。

 最近ぼんやりする事が多かったでしょう?

 もう限界なのよ。


 ……!

 そんな……


 まぁ、やってみなければ分からないけれど……

 試す必要はないの。

 あなたの身体にいてずっとあなたを見てきたわ?

 だから分かるの。

 あなたは日々を生きている。

 毎日記憶は増えるわ?

 これ以上わたしがあなたの身体にいたら……

 あなたの記憶が混乱してしまうの。

『空き』を作らないといけない時が来たのよ。


 空きを?


 ベリアルは今とても安定しているわ?

 真実を知ってもあんな風に笑えているし……

 わたしがベリアルの中に戻ってもベリアルが遥か昔のわたしの記憶に傷つく事は無いわ?

 あの子はわたしが身体を使っている時の出来事を全て見ていたの。

 だから、わたしが戻ってもベリアルが苦しむ事も無い。

 ただ、ふたつに別れていた心がひとつに戻るだけ。

 いつか、ベリアルに遥か昔の全ての記憶が戻って傷ついたら……

 その時はあなたが支えて欲しい……

 

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