ベリアルも相変わらずだね
「ぺるぺる? 大丈夫か?」
吉田のおじいちゃんが心配そうにわたしを見つめているね。
「え? あ、うん。平気……えっと……息子さんはどんな願い事をしたの?」
「あぁ……『皆が幸せな世界』だなぁ」
「皆が幸せな世界……?」
わたしと同じ考えだね。
魂が同じだからなのかな?
「前にベリアルにも同じ事を訊いたんだ」
「え? そうなの? ベリアルは、なんて答えたの?」
「『毎日お菓子が食べたい』って言ってたなぁ」
「毎日お菓子が食べたい!? くぅぅ! 堪らないね! その願いはわたしが叶えるよっ!」
「そうか、そうか。ベリアルは……ああ、いたなぁ。冷蔵庫の前で良い子に座ってるなぁ」
「え? あ、本当だ。お腹が空いたのかな?」
「夕飯がまだだからなぁ」
「勝手に冷蔵庫を開けないで座って待っているのが激かわだよねっ!」
「そうだなぁ。ついお菓子をあげたくなっちまうんだよなぁ」
「……おじいちゃん? 今まで通りにベリアルに接するのは辛くない?」
「じいちゃんより、ベリアルの方が辛いだろうからなぁ」
「おじいちゃん……」
「じいちゃんは誠実に生きるって決めたんだ。だから……じいちゃんらしくベリアルと向き合うつもりだ」
「おじいちゃんらしく……か。そうだね。ベリアルは吉田のおじいちゃんが大好きだからね」
「赦してもらえなくても……じいちゃんはベリアルを手離さねぇって決めたんだ。もう二度と……絶対に……」
「……そうだね。これからはずっと一緒にいられるんだね」
「これからは、ちゃんとした父親になるんだ。二度と後悔しねぇようになぁ」
吉田のおじいちゃんは一歩踏み出したんだ。
頑張って勇気を出したんだね。
偉いよ。
「さあさあ、夕飯にするか!」
おばあちゃんが涙目になりながら笑っているね。
吉田のおじいちゃんがこんな風に素敵に変わってくれて嬉しいんだろうね。
「お月ちゃんっ! 手伝うよっ!」
吉田のおじいちゃんは楽しそうにおばあちゃんを手伝い始めたね。
おばあちゃんの事を誰だか分かっていない……か。
これ以上は考えたらダメだね。
この島には心が聞こえる力を持つ人が他にもいるからね。
「ほれ、ベリアル。夕飯だぞ?」
「うわあぁい! ばあちゃん、今日のご飯はなんだ?」
「魚の塩焼きと野菜のいっぱい入ったカレーとデザートに羊羮もあるぞ?」
「羊羮!? やったあ!」
おばあちゃんとベリアルはすごく楽しそうだね。
「ははは。ベリアルはかわいいなぁ」
吉田のおじいちゃんもいつも通りにベリアルと話しているよ。
ベリアルはどう返事をするのかな?
「……じいちゃん……うん。えっと……うん」
やっぱり、簡単には赦せないか。
というよりは気まずい感じかな?
ベリアルも吉田のおじいちゃんがどんな人かを知っているから冷たく突き放すなんてできないよね。
ヒヨコちゃんの姿になってこの世界に来てからずっと大切にしてもらってきたのを分かっているからね。
「ほれ、チョコが入ったマシュマロだぞ?」
吉田のおじいちゃん……
さすがに今はベリアルもチョコ入りマシュマロには食いつかないと思うけどな。
遥か昔の真実を知ったばかりだし。
「……チョコ入りマシュマロ? うわあぁい! じいちゃん大好きっ! パクッ。モグモグ」
ベリアル……
ちょっと簡単すぎるんじゃない?
激かわだけどね。
ぐふふ。