グリフォンのお兄ちゃんと~後編~
「……わたしはもう種族王ではなくなりました。今は息子が傘下の種族を守らなければいけません。これは息子が決める事です」
グリフォンのお兄ちゃんは全てを息子さんに任せたんだね。
「うん……」
「息子はゲイザー族を赦しました。わたしにはこれに関して何も言う権利はありません。ですが……」
「……ですが? やっぱり、お兄ちゃんは赦せないよね。ゲイザー族に裏切られたって思うよね……」
「え? あぁ……いえ。魔族の世界はそういうものですから。ただ……」
「……ただ?」
「わたしから話そう。グリフォンには話しにくいだろうからな」
ハデスが少し困った顔で話し始めたね。
何か大変な事なのかな?
「世界旅行をしていたグリフォン夫妻と幼い息子は、あの騒ぎを聞いて慌ててグリフォンの島に戻ってきたのだ。グリフォンは落ち着いているのだが……つがいになったパートナーは、かなり怒っていてな」
「え? パートナーさんって確かあのすごく綺麗なグリフォンだよね? 優しそうだったけど……やっぱり攻めてきたゲイザー族に怒っているのかな?」
「あぁ……そうではないのだ。なんというか……母親として息子を強くしたいというか……」
「……? ゲイザー族に怒っているんじゃないの?」
「今回の事で、息子であるグリフォン王に王としての自覚をしっかり持って欲しいと考えたようでな」
「……ゲイザー族に攻め込まれた隙を作ったから怒っているの?」
「そうだな。まだ若い息子を心配しているのだろう」
「優しいお母さんなんだね」
「……優しい……か。あぁ……そう……なのか? まぁ、それでだ。浮遊島がまた浮かび上がるまで夫妻はグリフォンの島に滞在するらしい」
「え? じゃあ、グリフォンのお兄ちゃんもグリフォンの島に戻ってくるの!?」
「そうだ。良かったな。また、毎日遊びに来てくれるぞ?」
「うわあぁ! やったぁ! あ、でもアカデミーがあるから前みたいには遊べないか……残念だな」
「ペルセポネはグリフォンと遊ぶのが好きだったからな。明後日はアカデミーも休みだからゆっくり遊べるだろう」
「うんっ! でも、明日はお父様の仕事の代理をしないといけないんだよね。はぁ……気が重いよ。でも、お父様が群馬の温泉を楽しみにしているから頑張らないと」
「その前にはアルストロメリアにも行かないとな。ハーピーの息子がペルセポネと出かけるのを楽しみにしていたぞ?」
「ハーピーちゃんも行くんだったね。ふふ。アルストロメリアはお祭りなんだよね。屋台がいっぱい出るかな?」
「そのようだぞ? 久々にペルセポネとのんびり出かけられそうだな。わたしも今から楽しみだ」
「……! えへへ。わたしもハデスとお出かけするのが楽しみだよ?」
「へぇ……祭りか……」
ん?
今の声は……
「祭り……?」
「おい……祭りがあるのか?」
「縁日か?」
……!
しまった!
第三地区の皆の瞳がキラキラに輝き始めたね。
「あぁ……うん。ほら、アルストロメリア王の髪が生えたお祝いらしくて……それで人間が多いだろうからベリス王の人間相手のお店に行く約束を……」
「へぇ……祭りか……」
「祭りと言えば盆踊りだよな?」
「晴太郎の裸踊りじゃねぇか?」
「屋台もあるのか?」
「いいなぁ……オレ達も行きてぇなぁ」
第三地区の皆が騒ぎ出したよ。
しかも吉田のおじいちゃんの裸踊り?
絶対に来させるわけにはいかないよ!