うさちゃんとベリアルの気持ち(1)
「皆、遅れてごめん。うさちゃんとハデスは?」
二人ともかなり怒っていたって聞いたけど……
「ん? もう大丈夫だ。星治が来て落ち着かせてくれたからなぁ」
おばあちゃんは、そう言っているけど……
うさちゃんはまだ怒っているみたいだね。
ハデスは……もう怒っていないかな?
あれ?
いないね。
「オレノ、ペルセポネヲ、ワラウトハ、ユルセン。ハイニ、シテヤル」
灰にする?
ベリアルを?
うさちゃんは怖い事を言っているね。
闇の力を使えるらしいから気をつけないと本当に灰にしちゃうかも。
「うさちゃん……ベリアルはバカにして笑ったんじゃないの」
「アレハ、アクイガ、アッタ。アイツハ、ケス、ヒツヨウガ、アル」
「うさちゃん……そんな事をしないで? ベリアルは大切な家族なんだから」
「……イヤダ。オレハ、アイツガ、キライダ」
やっぱり、まだ嫌いだったんだね。
「うさちゃんはオレに怒ってるのか? ぺるみを笑ったから?」
ベリアルが嫌いって言われてまた泣きそうになっているね。
「ナケバ、スムト、オモウノカ? ダカラ、キライナンダ」
うわあ……
これは困ったね。
「ははは! うさちゃんは勘違いしてるみてぇだなぁ」
え?
おばあちゃんがうさちゃんに笑いながら話しかけた?
「カンチガイ?」
「そうだぞ? 赤ん坊が口の周りに食べ物をつけてたらかわいくて笑っちまうだろう? それと同じだ。ベリアルはぺるみを妹みてぇに思ってるんだ。だから、かわいくて笑ったんだ。なぁ? ベリアル」
「妹……うぅ……姉ちゃんとは思いたくないからな……そうだな。ぺるみは妹みたいなものだな」
ベリアルがお兄さん!?
「ええ!? わたしがお姉さんだよね? ベリアルが赤ちゃんだよ!?」
かわいいヒヨコちゃんなんだから絶対に弟だよ。
「はぁ!? オレが兄ちゃんだ!」
「わたしがお姉さんだもん!」
この戦いには負けられないよ。
「……キョウダイカ」
「うさちゃん?」
どうかしたのかな?
「アァ……イヤ……」
そういえば、うさちゃんは魔法石として生み出された時に砕けた、欠片のひとつだったんだよね。
「うさちゃん……?」
「……オレニハ、キョウダイトカ、ソウイウノハ、ヨク、ワカラナイ、カラナ。ダガ、ペルセポネノ、アカンボウノ、コロノ、コトハ、オボエテイル。スゴク、カワイカッタ。イマモ、カワイイガナ」
兄弟がいない……か。
他にも聖獣が破片から生まれていたらって考えているのかな?
ずっと寂しかったのかな?
「ペルセポネヲ、デキアイスル、ゼウス、タチヲ、ミテ、コレガ、オヤノ、アイカト、ウラヤマシクモ、アッタ」
親の愛……
「オレヲ、ウミダシタ、ハルカ、ムカシノ、ペルセポネハ、ズット、ペルセポネノ、カラダノ、ナカデ、ネムリ、ツヅケテイタ。オレノ、ハハオヤハ……イマモ、ネムリツヅケテ、イル」
……わたしの身体の中で眠り続けている?
記憶が蘇らないのはそのせいなのかな?
「うさちゃん……寂しかったんだね。ずっと天界で赤ちゃんのわたしに寄り添いながら……ずっと辛かったんだね」
「……ペルセポネ……オレニハ、ペルセポネ、ダケダッタ。ホカニハ、カゾクハ、イナクテ。ダカラ……イツカ、ハルカ、ムカシノ、キオクガ、モドッテ、マタ、アノコロノ、ヨウニ……ト」
わたしは……
ずっと、うさちゃんを傷つけていたんだ。
そんな大切な気持ちにも気づかずに、天界でお父様とお母様に愛されて……
うさちゃんは、どれだけ辛い思いをしてきたんだろう。
わたしはどれだけうさちゃんを苦しめてきたんだろう。




