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魔術科の広場で(12)

「何やってるんだ?」


 え?

 この声は……


「イフ……」


 イフリート王子!?

 どうして人間のアカデミーにいるの!?

 まさか、人間を食べに来たんじゃないよね!?

 人化しているけど……

 

「……火か。クチバシから火が出るなんてどういう構造だ?」


「冷静に話している場合じゃないよ! ヒヨコちゃんが死んじゃうよ!」


 あれ?

 でも創り物の身体だよね?

 でも……でも……熱がっているし……


「死ぬはずないだろ。自分の力で死んだら魔術なんて使えないからな」


 え?

 あ……

 確かに……


「でも熱いって言って……」


「本当に熱いのか?」


 イフリート王子がベリアルに話しかけているね。


「……え? あれ? そういえば……熱く……ない?」


 ベリアルが落ち着いたみたいだね。


「ええ!? 大丈夫なの!? はぁ……良かった。安心したよ……」


 あれ?

 腰が抜けちゃった?

 座り込んで立てなくなっちゃったよ。

 うぅ…… 

 ダメだ。

 やっぱり立ち上がれない。


「……ぺるみ……大丈夫か?」


 ベリアルが心配そうに飛んできて膝に乗ってくれたね。


「うん。ヒヨコちゃんが無事で良かったよ」


「ごめん。オレ慌てちゃって……」


「気にしないで? 皆もケガはないかな?」


「はい。わたし達は平気です。ヒヨコ様が無事で安心しました」


 マリーちゃんは本当に良い子だね。


「それにしても……どうして王子がここにいるの?」


 やっぱり人間を食べに……


「あぁ……あいつが……ぺるみの……婚約者のあいつが怒り狂って第三地……いや、あの……ニホン? に連れ戻されて……で、たまたまニホンにいたオレが空間移動させられたんだ。火の力はオレの種族の力だからな」


 そういえば、マンドラゴラが大量発生した時に幸せの島を火の海にしていたよね。

 懐かしいなぁ……

 ん?

 ハデスが連れ戻された?

 もしかして、わたしの口の周りのジャムをベリアルが笑った事に怒って連れ戻されたとか!?


「オレ……帰りたくない……絶対オレに怒ってるんだ。帰ったら命が終わる……」


「大丈夫だよ。そんな事にはならないよ」


 ハデスはわたしとベリアルの魂がひとつだった事を知っているんだから。


「……婚約者のあいつはいいとして……あのうさぎは、まずそうだったな」


「え? うさちゃんの事?」


 うさちゃんは水晶で見ていたのかな?


「ぺるみをバカにしたヒヨコを亡き者にするって言って暴れてたぞ?」


 王子が遠い目になっているね。

 第三地区は今大変な状況みたいだよ。


「……オレ……今日は帰りたくない」


 ベリアルのつぶらな瞳がウルウルし始めたね。


「いつまでも逃げられないよ? 早めに帰って落ち着いてもらおう? ニホンの皆も心配だし」


「うぅ……帰りたくないよぉ……」


 かわいそうだけど、そういうわけにもいかないし。


「ごめんね。皆、明日の夕方から魔術の練習をするのでもいいかな? ニホンが大変な事になっているみたいで」


「え? もちろんです! 早く帰ってください!」


「あ、待って? 明日は予定があったんだ」


 アルストロメリアに行って、それが終わったら天界でお父様の代理をしないといけないんだったよ。


「わたし達の事は気にしないでください」


 マリーちゃんは本当に良い子だよ。


「お昼休みとかって……ここにいる?」


「あ、はい。お昼休みは、ほぼこの広場にいます」


「じゃあ、その時に魔術の使い方のコツを話すね? また明日ね? 騒がせてごめんね」


「いえ、お気をつけて……」


 よし。

 急いで第三地区に戻ろう。

 うさちゃんとハデスが怒っているなんて……

 嫌な予感しかしないよ。


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