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魔術科の広場で(7)

「確かに! その通りです。えっと……想像か……ヒヨコ様を創る? ヒヨコ様は……小さくてかわいくて黄色で……あ、色は無理か。あとは……フワフワ……水でできるのかな?」


 ジャックがベリアルをニヤニヤしながら見つめているね。

 

「ふふ。一度に色々創ろうとすると難しいからとりあえず丸を創ってクチバシをつけてみたらどうかな?」


「丸にクチバシ……よし! やってみます。ヒヨコ様みたいにかわいい丸に国宝級に美しいクチバシ……ぐふふ」


 お?

 ジャックはベリアルの素晴らしさに気づいているみたいだね。

 そうなんだよ。

 ベリアルは国宝級に素晴らしいヒヨコちゃんなんだよ。


「……」


 ん?

 ベリアルがドン引きしているね。

 また変態が増えたから身の危険を感じているのかな?

 

「うーん。やっぱり水が出てこないです」


「そうだね……じゃあ、一回落ち着いて目を閉じて?」


「え? あ、はい」


「肩の力を抜いて右手を胸の前に伸ばして、想像してみて?」


「想像……?」


「真ん丸の水が身体の中から湧き出してくるの。温かい水。そうだな……お母さんのお腹にいる時みたいな安心感? 難しいかな……例えば大好きな相手に抱きしめられているみたいな温かさ?」


「お腹の中……難しいです。でも……母ちゃんが抱きしめてくれるぬくもりなら分かります」


「ふふ。お母さんと仲が良いんだね」


「アカデミーに来る前に抱きしめてくれたんです。身体に気をつけてって……」


「今は寮にいるから会えなくて寂しいね」


「……母ちゃんに楽させてやりたいんです。オレの家はすごく田舎にあって皆が貧しいんです。だから、オレが貴族の邸宅で働いて皆に良い暮らしをさせてやりたくて」


「そうだったんだね」


「だから、無理をしてでも魔術を使えるようにならないと」


「……? ジャックが無理をするの?」


「はい。皆オレに期待してるんです。絶対に魔術を使わないといけないんです」


「……魔力はジャックの物なのに?」


「え?」


「誰かの為に犠牲になるの?」


「え? 犠牲……?」


「追い詰められているみたいに見えたから」


「……! それは……」


「ジャックはまだ子供なんだよ? 地元の皆の幸せを背負うにはまだ幼すぎるよ」


「殿下……」


「今は自分の為だけを考えてみない? そうだな……例えばクラスの皆と魔術を使えたら楽しいなとか」


「……でも……オレは絶対に貴族の邸宅で働かないと……」


「誰かに絶対にそうなれって言われたの?」


「……そうじゃないけど……ずっと皆が苦労している姿を見てきたから。オレが皆を楽にしてあげたくて」


「『やらなきゃいけない事』と『やらされる事』の違いって分かる?」


「え?」


『頑張っているのにできて当たり前だって言われる事』と『なんの苦労もしないで他人にばかり頼る人』ってどう思う?」


「……? 難しくてよく分からないです」


「誰かの為に頑張る事は悪い事じゃないよ? でも、それで追い詰められちゃったら……辛くなるのはジャックだよ? 魔力があるからって……確かに特別な事だけど、全てにおいて頼られても困らない?」


「……え?」


「本当は、もう気づいているんだよね? 限界まで追い詰められている事に」


「……! でもオレが頑張らないと……オレが地元の皆を幸せにしないと」


「ジャックは村長なの? 市長かな?」


「え? ソンチョウ? それは?」


「あぁ……そっか。村とかは無いのかな……うーん。ジャックは領主なのかなって事だよ?」


「……え? まさか……オレはただの平民です。領主様には会った事もありませんよ」


 会った事もないの?

 領主ってそういう雲の上みたいな存在なのかな?

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