魔術科の広場で(4)
「モグモグ。ぺるみはよく噛むんだぞ? モグモグ」
くぅぅ!
ベリアルがわたしの心配をしてくれているよ。
「ぐふふ。ぐふふふ」
「……うわ。気持ち悪っ」
「かわいいヒヨコちゃんがわたしの心配を……堪らないね」
「……救いようがないな」
ベリアルに呆れられちゃったね。
でもこの愛は誰にも止められないんだよ!
「ぐふふ。呆れるヒヨコちゃんも超絶かわいいよっ!」
「……はい、はい。勝手に言ってろ」
「うんっ! ぐふふ。ヒヨコちゃんがかわいすぎて世界が平和になったらヒヨコちゃんには毎日ライブをしてもらって。そうだ、ファンサのやり方を覚えてもらって……ぐふふ。うちわを世界中に無料配布したらいいかもね。ぐふふふ」
「こいつはさっきから何を言ってるんだ? 気味が悪いな。黙ってこの大きいパンを食べてろ」
「うわぁ! ヒヨコちゃんがパンをくれたよ。ぐふふ。ヒヨコちゃんの手の味がついたパン……ぐふふ」
「……日に日に変態度が上がっていくようだな」
「仕方ないよ! ヒヨコちゃんがかわいすぎるんだから! いただきます。モグモグ……このパンおいしいね。モグモグ」
「はぁ……これでぺるみはしばらく静かになったな」
「あはは! ペリドット様は本当にヒヨコ様が好きなんですね」
マリーちゃんがクッキーを食べながら楽しそうに話し始めたね。
「困った奴なんだ。寝言でもオレを呼びながらヨダレを垂らすんだ」
「寝言でも!? さすがはペリドット様ですね」
「マリーは、こうなるなよ? 人として終わりだぞ?」
「あはは! 気をつけます」
マリーちゃんとベリアルはさっきから悪口を言っているような……
気のせいだよね?
それにしてもこのパンはおいしいね。
「で? 魔術が難しいんだって?」
ベリアルは真面目だからこういう事はきちんとするんだよね。
「はい……この前もう一度属性検査をしたら違う属性だって言われた子達がいて」
「神殿の属性検査は間違いばかりだったからな」
「そうなんです。あの……ちなみにヒヨコ様は魔術を使えたりするんですか? 空間移動とか空を飛んだりするのは見てきましたけど……」
「ん? オレは火を使うぞ?」
「火属性って事ですか? すごいですね! アカデミーにも火属性の学生がいるんですよ」
火属性のヒヨコちゃんか……
鴨がネギ背負って……みたいな……焼き鳥?
いや、ファイアーダンスをするヒヨコちゃん?
ぐふふ。
堪らないね。
「……ぺるみは今度は何を想像してるんだ? にやけて気持ち悪いな」
「あはは! きっとヒヨコ様が火の力を使う凛々しい姿を想像しているんですよ」
「……パンを食べていて話さないだけまだマシか」
「心からヒヨコ様を愛しているんですね」
「そんな清らかな感じじゃないけどな……見てみろよ、この『にやけ顔』を」
「あぁ……確かに……お顔がにやけきってますね」
「これさえなければ良い奴なんだけど……」
「あ……あはは……わたしの口からは、なんとも……」
……恥ずかしくて何も言い返せないよ。
黙ってパンを食べていよう……
「あの……はじめまして。オレは魔術科のジャックです。勝手に話しかけてごめんなさい」
ん?
この男の子もジャックなんだね。
この世界は地位が上の人間から話しかけないと下の人間は話してはいけない決まりがあるみたいだからね。