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魔術科の広場で(3)

(オレは優しくなんてないです。ただ、大好きなぺるみ様にはいつも笑っていて欲しいんです)


 いつも笑う……?

 ゴンザレスがわたしの肩に乗ってきてくれたね。

 

(はい。ぺるみ様も、ベリアルや第三地区の皆さんに笑っていて欲しいと思いませんか?)


 ……うん。

 そうだね。

 辛い顔なんて見たくないよ。

 あぁ……

 また、悪い方に考えちゃったよ。

 助けてくれてありがとう。

 ゴンザレスにはいつも助けてもらっているね。


(これくらい助けたうちには入りませんよ? ぺるみ様がオレ達ゲイザー族を助けてくれた恩返し……なんて風にも思わないでくださいね? オレはただ、純粋にぺるみ様に幸せに暮らして欲しいだけなんですよ?)


 ゴンザレス……ありがとう。

 わたしは本当に幸せ者だね。


(はいっ! そうですよ。ぺるみ様は幸せなんです。だから……笑っていてください。ずっとずっと……毎日笑いながら暮らしてください。ぺるみ様が笑っているとオレも皆も幸せなんですから)


 ……なんて優しい世界なんだろう。

 誰かが誰かの幸せを願っている世界……

 いざこざはあったとしても国同士で争う事はない。

 穏やかで温かい世界。

 深く知ろうとしなければこの世界は本当に理想郷みたいな素晴らしい場所だよ。

 でも……

 実際は厳しい身分制度に縛りつけられて奴隷みたいに生きている人間もいるし、魔族は人間を食べているんだ。

 現実を見るのが怖くて、目を背けて幸せな部分だけを見て……

 これから先もこんな生き方をしていていいのかな?


(それは悪い事ではありませんよ。辛すぎる現実から目を背けるのは心を守る為には大切な事ですから。オレだって長く生きてきた時の中で辛すぎて見て見ぬ振りをしてきた事がありましたよ? 全てを知る必要はないんです。全てを理解する必要もないんです。皆そうやって生きているんですから)


 ……そうだね。

 わたしは天族だけど、人間として魔族の中で暮らしてきたから……

 だから、人間の気持ちも魔族の気持ちも分かるの。

 その気持ちが絡まってもどかしくて……

 ダメだね。

 ごめん。 

 また、暗い気持ちになっちゃったよ。


(オレじゃ力になれないかもしれないけど……話を聞く事はできます。いつでもオレに話しかけてください。今まで、この『心を聞く力』が嫌いだった時もありました。でも、今はこの力があって良かったと思います。大切な誰かの心に寄り添えるってすごく嬉しいですね)


 うん。

 ゴンザレスがいてくれて、すごく心強いよ。 

 本当に本当にありがとう。

 しっかりしないとダメだよね。

 今から魔術科の皆の先生になるんだから。


(そうです。その意気ですよ)


 よし!

 元気が出たよ。

 あ……

 安心したらお腹が空いちゃった。


(ははは! それなら急がないと、パンもクッキーも食べられちゃいますよ)


 そうだね。

 ゴンザレスも一緒に食べよう?


(はいっ!)


 嬉しいな。

 誰かがずっと心にいてくれるみたいで心強いし。

 ……遥か昔のベリアルもこんな気持ちだったのかな?

 心の中にわたしがいて安心できたのかな?

 ベリアルもわたしも遥か昔の記憶が全て蘇る事があるのかな?

 全部思い出してもベリアルと今みたいな関係でいられるのかな?

 はぁ……

 分からない事ばかりだね。


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