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市場で(3)

 ルゥのおじい様はやっぱり名君だったのかな?

 それに……ルゥの父親も……おじい様があんな亡くなり方をしなければ名君って呼ばれていたの?

 聖女の肉から生み出されたチェルシーちゃんに殺害されていなかったら今頃皆が幸せに暮らしていたのかな?

 ルゥの母親も生きていてお兄様も幸せにリコリス王国で暮らしていたのかな?

 あぁ……

 心が痛い……

 グッて掴まれているみたいに……


「姫様……大丈夫ですか? お顔の色が……」


 相談役が心配そうに話しかけてくれたね。


「……うん。大丈夫……ごめんね。そっか……先々代の王様も同じ事を考えていたんだね」


「はい……あの、やはり体調が……この椅子を使ってください」


「あぁ……ありがとう」


 ちゃんとしないと、これ以上心配させたら申し訳ないよ。


「姫様、疲れた時には甘い物が効きますから。豆を甘く煮た物です。熱いですから気をつけて」


 市場のおばあさんが、おしるこみたいな物を持ってきてくれたね。

 この世界にもあるんだね。


「ありがとう。日本にも似たような食べ物があるんだよ。ふふ。嬉しいなぁ」


「ニホンにも? そうでしたか」


「いただきます。……! おいしい! 優しい味だね」


 おばあちゃんが作ってくれるおしるこに似ているよ。


「姫様……耐えられないくらいの重荷を背負っているように見えますが……大丈夫ですか?」


 このおばあさんは言葉使いが丁寧だね。

 確か、若い頃に貴族の邸宅で働いていた人間だっけ?


「心配してくれてありがとう。色々あって考える事が多くて……ゆっくりひとつずつ解決している最中なんだ」


「そうでしたか……不思議ですね。姫様は先々代の陛下にはお会いしていないのに、考え方が良く似ていて……」


 相談役にも同じような事を言われたよね。

 そんなに似ているのかな?

 

「先々代の王様はおばあさんから見てどんな人間だったのかな?」


「そうですねぇ。美しく清らかでお優しい……そんな感じでしょうか。若い頃は陛下のお美しさに心を奪われたものです」


「ふふ。お総菜屋さんのおばあさんも同じような事を言っていたね」


「わたし達くらいの年齢の者は皆、陛下に恋をしていたのですよ? 懐かしいですねぇ」


「そうなんだね。どんなに名君だって言われていても……悪いところはあったんじゃないのかな? 誰も悪く言っているのを聞かないんだよね。わたしに気を使っているのかな?」


「悪いところ……そうですねぇ。うーん……思い返してみても何も浮かんできませんねぇ。『完璧な王様』といったところでしょうか」


「完璧な王様……?」


 完璧……か。

 実の息子さんを殺害したうえに刺殺された事は誰も知らないんだね。


「考えてみれば……あの頃が一番幸せでした」


 先代の王様の時代は大変だったみたいだからね。


「おばあさん……先々代の王様はどうして亡くなったのかな? まだ若かったはずだよね?」


 皆は何て聞いているんだろう?


「朝、従者が起こしに行くとベットで冷たくなっていたと聞いていますが」

 

「……そう」


 世間的にはそうなっているんだね。


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