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市場で(1)

「お前もジャックなのか? モグモグ」


 ベリアルがクッキーを食べながら元騎士のジャックに話しかけているね。


「あぁ……はい。聖獣様……」


「ぺるみはこんな変態だけど、誰かが自分のせいで不幸になるのを嫌がるんだ。だから『自分が盾になる』なんて言われたら悲しくなるんだぞ? モグモグ」


「でも……何か恩返しがしたくて」


「恩返しか……じゃあ、幸せになって笑ってろ。それがぺるみが一番喜ぶ恩返しだからな。モグモグ」


「え? ……そんな事でいいんですか?」


「一番大切な事だぞ? 幸せになるのはすごく大変で難しいからな」


 ベリアルが言うと重みが違うね。


「幸せになって笑う……? ペリドット様が現れてからは毎日が幸せです。でも、もらってばかりで何も返せないのが心苦しくて」


「そんな事ないさ。お前と息子のジャックが来てくれたから市場の皆がすごく助かってるんだ。ぺるみもすごく感謝してるんだぞ?」


「ペリドット様が感謝……?」


 元騎士のジャックが首を傾げているね。


「ふふ。そうだよ? 二人が来てくれたから市場の皆も心強いんじゃないかな? ほら、ジャックの顔を見て? すごくかわいいよ?」


 クッキー屋さんのジャックが瞳をキラキラさせながら元騎士のジャックを見つめているよ。

 憧れているんだろうね。

 強いだけじゃなくて、優しいからね。


「まだ揉め事もなくて役に立っているのか分かりませんが……」


「今までは、やられっぱなしでね。屋台を壊されても殴られても黙って我慢するしかなかったみたいなの。そんなの間違っているよ。悪い事をしたらきちんと罰を受けないとね。でも、厳しい身分制度があるからなかなか難しくて……」


「そうですね。平民は貴族に虐げられていますが……我慢するしかありませんから」


「二人がいてくれたら、貴族も市場に手を出しにくいだろうし。それに、四大国の王様達が『この市場は素敵な場所だ』って褒めてくれたの。よほどのバカでもない限り市場を荒らしたりはしないはずだよ。でも……時々『そのよほどのバカ』が現れるんだよね。そうなったら二人には警備兵が来るまでの時間稼ぎをして欲しいんだ」


「それと……ペリドット様は相談役の負担を減らしたいんですよね?」


「うん。ずっと市場を守る為に無理をして疲れきっていたからね。これからは少し楽をして欲しいんだ。って言ってもなかなか難しいだろうけど……」


「姫様……そんな風に……ありがとうございます。本当にありがとうございます」


 相談役が嬉しそうに笑っているね。

 でも、瞳に涙が溢れているよ。


「これからは少しずつ貴族と平民の壁が取り除かれていくはずだよ?」


「貴族と平民の壁が……? それはなかなか難しいかと……」


 相談役が申し訳なさそうに話しているね。


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