わたしはこれ以上誰も巻き込みたくないの
「あ! ペリドット様!? もう大丈夫なんですか!?」
クラスメイトのジャック達がわたしを見つけて駆け寄ってきてくれたね。
「うん。さっきはいきなり倒れて驚かせちゃったね」
「あぁ……あの……どこか悪いんですか?」
前の席のジャックが心配そうに話しかけてくれたね。
「えっと……もう大丈夫だよ? 寝不足とか……色々あって。でも二時間寝たらすっきりしたよ。ありがとう」
「あの……ごめんなさい。オレ……元騎士のジャックさんから無理矢理聞き出しちゃって」
「え? 何を?」
「悪い奴がペリドット様を陥れようとしているって……小さい子を洗脳して悪さをさせようとしているって」
「あぁ……その事……」
「申し訳ありません。我ら親子の恩人であるペリドット様に黙っているように言われたのに……倒れたと聞いてその悪者に何かされたのではないかと心配になって」
元騎士のジャックが申し訳なさそうにしているよ。
「……ありがとう。でも、もう大丈夫だよ? ちょっと疲れていたのかな。あ、じゃあ、あの事も話したのかな?」
「はい。ジギタリス公爵からの仕打ちや、ペリドット様に雇用主になって助けていただいた事も全て話してしまいました」
「そう……わたしの問題に巻き込んでしまいそうで心配だよ」
「ペリドット様……オレはまだ身体も前のように動かないし何の役にも立てないけど……お願いです。恩返しをさせてください」
「……恩返し?」
「はい。ペリドット様の盾になる事ならできますから」
「わたしの盾に?」
「はい。こんな身体でもペリドット様を守れるなら……」
「あぁ……お願いだからそんな事を言わないで? 悲しくなっちゃうよ」
「ペリドット様……?」
「恩返しをして欲しいから治癒の力を使ったんじゃないよ? 父親思いのジャックとその父親に幸せになって欲しかったんだよ。盾になるなんて悲しい事を言わないで」
「でも……何の恩返しもできないなんて……死にかけていたオレを助けてくれて、こんなに良くしてもらったのに」
「お願いだからそんな事を考えないで? ジャックが悲しむよ? 父親と住む家を建てるんだって言って頑張っているんだから」
「ジャックが……」
「さっきも話したけど、わたしは二人に幸せになって欲しいの。だから……あれ? 息子さんのジャックはいないのかな?」
「あぁ……はい。薪売りのジャックさんの薪の配達に付いて行きました。重いから代わりに持つと言って」
「ふふ。息子さんのジャックも優しいね」
「はい……自慢の息子です」
「息子さんのジャックがひとりぼっちで残される事になったら……わたし……申し訳なくて生きていけなくなっちゃうよ」
「……! ペリドット様」
「わたしは聖女として死んだの。お兄様やおばあ様を残して……先に逝く辛さを誰よりも分かっているの。だから……お願いだよ。わたしの盾になるなんて言わないで? 息子さんと幸せになって欲しいの。ね?」
「ペリドット様……」
「誰かがわたしのせいで不幸になるのは嫌なの。これ以上わたしのせいで……」
月海もルゥも第三地区の皆もわたしの為に巻き込まれて……
これ以上は誰も巻き込ませたくないの。
巻き込んだらいけないんだよ。