わたしはこんなにベリアルが好きなのに
「よし! ぺるみが来たから出かけるぞ。今から市場に行けばまだ相談役とクラスの奴らの話に間に合うだろう。あれ? 氷でできたオレか?」
時を動かすとベリアルが話し始めたね。
「えへへ。寝癖まで忠実に再現した氷のベリアルだよ。激かわだよね。ぐふふ。ぐふふふ」
「うわ……その笑い方……気持ち悪っ」
(こいつ……これがなきゃ良い奴なんだけどな……)
ん?
あれ、ベリアルの心の声が聞こえてくるね。
おばあちゃんが聞こえなくしてくれるはずなんだけど……
「まあ、いいや。ほら、行くぞ。ぺるみがいきなり倒れたからクラスの奴らが心配してるはずだからな」
(オレのせいでぺるみが消えなくて良かった……オレ……やっぱりぺるみが好……)
あれ?
聞こえなくなったね。
ぺるみが……す……?
『す』なんだろう?
でも、ベリアルが心の中で考えた事を訊けないよね。
「うん。じゃあ行こうか」
「もうアカデミーの講義は終わったから制服じゃなくていいのか?」
「え? あぁ……冥界に行く前にパジャマのワンピースから普段着に着替えたんだよね」
「まあ、平気だろ。ほら、行くぞ」
「あ、うん。うさちゃんも一緒に……」
ベリアルのお昼寝用バスケットで眠っているんだね。
連れて行ったらかわいそうだね。
「ゴンザレス。市場でクッキーを食べようなっ!」
……!
かわいいヒヨコちゃんが空に浮かぶハリセンボンに話しかけているよ。
ぐふふ。
超絶かわいいよっ!
ベリアルはゴンザレスとすっかり仲良しになったね。
すごく楽しそうだよ。
ベリアルが、吉田のおじいちゃんの息子さんだったって知っても落ち着いているみたいで安心したよ。
「よし! 出発だ。ぺるみ、抱っこしろ!」
……!
抱っこしろ?
ぐふふ。
堪らないね。
生意気なヒヨコちゃんがわたしの腕の中に飛び込んできたよ。
今日もしっかり寝癖が……
ぐふふ。
ぐふふふ。
「……お前……顔が……気持ち悪いぞ……」
ベリアルが呆れた表情でわたしを見つめているね。
「ぐふふ。気にしないで。生まれつきこの顔だから。ぐふふ」
「……天界にいたペルセポネ様はそんな顔はしてなかったぞ」
「……!?」
うぅ……
何も言い返せないよ。
「ほら、もう行くぞ」
ベリアルに呆れられたまま市場の人間のいない場所に空間移動したけど……
わたしってそんなに、にやけているのかな?
自分じゃ分からないよ。
(ぺるみ様……気にする事はありませんよ)
ゴンザレス……
うぅ……
やっぱりわたし、ベリアルに嫌われているのかな?
(大丈夫ですよ。ベリアルはぺるみ様が大好きですから。ささ、急がないと相談役とクラスの方との話が終わってしまいますよ?)
……ベリアルがわたしを好き?
本当に?
(はい! 大好きですよ?)
……本当に、本当?
(はい! 本当に本当ですよ?)
……ぐふふ。
ぐふふふ。
ベリアルがわたしを大好き……
「ぐふふ。ぐふふふ」
「……うわ。今度はどうして笑い始めたんだ? 気持ち悪っ」
あぁ……
ベリアルにはわたしとゴンザレスの会話は聞こえていないからね。
わたしは、いきなり笑いだした変な人みたいになっているんだ。
でも……
「もう……ベリアルってば……本当はわたしが好きなんて……ぐふふ」
「……!? はあ!? 絶対あり得ない! この変態め! ついに妄言まで……」
あぁ!
かわいいヒヨコちゃんがわたしの腕から飛んで逃げちゃったよ!
もっと、しっかり掴まえておけばよかった……
「やーい! ぺるみのバーカ!」
しかも、暴言まで!?
やっぱり……ベリアルはわたしが嫌いなのかな?
うぅ……
わたしはこんなにベリアルが好きなのに。