止められた時の中で(3)
「おばあちゃん……辛かったね」
やっぱり他人の心なんて聞きたくないよ。
「ペルセポネ……そうね。でも……捨てられた子供達はもっと辛かったはずよ? もちろん、ペルセポネとベリアルの……『わたくしの息子』もね」
「おばあちゃん……あの……ね?」
「……?」
「これからはわたしに、おばあちゃんの苦しみを話してくれないかな?」
「……え?」
「おばあちゃんは無理をしすぎているんだよ。ずっと我慢して……全部自分のせいにして……いつも吉田のおじいちゃんを庇って……捨てられた子供を愛しているって言えなくて……」
「ペルセポネ……」
「おばあちゃんはいつも言ってくれたよ? わたしが月海とルゥの身体を奪い取ったって知った時も、第三地区の皆を巻き込んだって苦しんだ時も……月海のせいじゃないから気にするなって」
「ペルセポネ……でも……それは……それとこれとは全く違うわ?」
「おばあちゃんは吉田のおじいちゃんが大好きなんだよね。捨てられた子供達の事も……」
「ペル……」
「誰かを大好きな気持ちってすごく素敵な気持ちだよね。温かくて幸せなの。でも……それだけじゃない。誰かを好きなると……すごく怖いよね。嫌われたらどうしよう。失いたくない。取られたくない。わたしはこんなに大好きなのに相手はどうしてわたしをもっと好きになってくれないの? 捨てられたくない。離れたくない……心の中はいつも不安でいっぱいなの」
「……そうね」
「おばあちゃん……自分がガイアだって話すつもりはないの?」
「話せないわ……話せばウラノスはわたくしから離れていってしまうもの」
「このまま……タルタロスのコットス達にも黙っているの? コットスは天界に帰りたかったけど母親に迷惑をかけたくないからタルタロスに残ったって言っていたよ? 母親を……おばあちゃんの事を愛しているんだよ。唯一自分達を大切に想ってくれている母親を……」
「……ペルセポネ……わたくしは……今のままでいたいの。名乗らなくていい……この第三地区で『お月ちゃん』として暮らしていくわ? これからはコットス達も第三地区に遊びに来てくれる事になったし……」
「それが……おばあちゃんの選んだ幸せなんだね……」
「ええ……そうね……わたくしが名乗れば今のこの幸せは消えてしまうの。大切なウラノスがわたくしを愛してくれて、コットス達にも、ベリアルとペルセポネにも会える。これがわたくしの幸せなの」
「……うん。そうだね……」
「これ以上を望めば今の幸せは消えてしまうのよ。それに……名乗ったら……ウラノスは今のようにわたくしを愛してはくれないわ」
「そんな……」
「仕方ないわ。わたくしはウラノスの母親でもあるの……」
「おばあちゃん……」
「これからはコットス達を……今まで幸せにしてあげられなかった分、誰よりも幸せにするわ」
「……うん」
本当は名乗りたいはずなのに……
我慢しているんだね。
これ以上はわたしが口を出したらダメだよね。
わたしにできるのは、おばあちゃんが幸せに暮らせるように見守る事だけ……なのかな?