表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

621/1484

止められた時の中で(3)

「おばあちゃん……辛かったね」


 やっぱり他人の心なんて聞きたくないよ。


「ペルセポネ……そうね。でも……捨てられた子供達はもっと辛かったはずよ? もちろん、ペルセポネとベリアルの……『わたくしの息子』もね」


「おばあちゃん……あの……ね?」


「……?」


「これからはわたしに、おばあちゃんの苦しみを話してくれないかな?」


「……え?」


「おばあちゃんは無理をしすぎているんだよ。ずっと我慢して……全部自分のせいにして……いつも吉田のおじいちゃんを庇って……捨てられた子供を愛しているって言えなくて……」


「ペルセポネ……」


「おばあちゃんはいつも言ってくれたよ? わたしが月海るみとルゥの身体を奪い取ったって知った時も、第三地区の皆を巻き込んだって苦しんだ時も……月海のせいじゃないから気にするなって」


「ペルセポネ……でも……それは……それとこれとは全く違うわ?」


「おばあちゃんは吉田のおじいちゃんが大好きなんだよね。捨てられた子供達の事も……」


「ペル……」


「誰かを大好きな気持ちってすごく素敵な気持ちだよね。温かくて幸せなの。でも……それだけじゃない。誰かを好きなると……すごく怖いよね。嫌われたらどうしよう。失いたくない。取られたくない。わたしはこんなに大好きなのに相手はどうしてわたしをもっと好きになってくれないの? 捨てられたくない。離れたくない……心の中はいつも不安でいっぱいなの」


「……そうね」


「おばあちゃん……自分がガイアだって話すつもりはないの?」


「話せないわ……話せばウラノスはわたくしから離れていってしまうもの」


「このまま……タルタロスのコットス達にも黙っているの? コットスは天界に帰りたかったけど母親に迷惑をかけたくないからタルタロスに残ったって言っていたよ? 母親を……おばあちゃんの事を愛しているんだよ。唯一自分達を大切に想ってくれている母親を……」


「……ペルセポネ……わたくしは……今のままでいたいの。名乗らなくていい……この第三地区で『お月ちゃん』として暮らしていくわ? これからはコットス達も第三地区に遊びに来てくれる事になったし……」


「それが……おばあちゃんの選んだ幸せなんだね……」


「ええ……そうね……わたくしが名乗れば今のこの幸せは消えてしまうの。大切なウラノスがわたくしを愛してくれて、コットス達にも、ベリアルとペルセポネにも会える。これがわたくしの幸せなの」


「……うん。そうだね……」


「これ以上を望めば今の幸せは消えてしまうのよ。それに……名乗ったら……ウラノスは今のようにわたくしを愛してはくれないわ」


「そんな……」


「仕方ないわ。わたくしはウラノスの母親でもあるの……」


「おばあちゃん……」


「これからはコットス達を……今まで幸せにしてあげられなかった分、誰よりも幸せにするわ」


「……うん」


 本当は名乗りたいはずなのに……

 我慢しているんだね。

 これ以上はわたしが口を出したらダメだよね。

 わたしにできるのは、おばあちゃんが幸せに暮らせるように見守る事だけ……なのかな?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ