吉田のおじいちゃんと天界(11)
「分かり合えるまで何度でも話すよ。お母様とハデスみたいにね。それにわたしがポセイドンの子供の親になれば、ポセイドンの気持ちが分かるでしょ?」
しつこいと思われても話し続けるよ?
気持ちを伝えずに後悔したくないから。
「……そんなに甘い考えだからファルズフみたいな奴につけこまれたんだ。甘いところはゼウスに似たんだな。だから……(皆が側に集まるのか?)」
ポセイドンの言う通りかもね。
でも、わたしはそんなお父様が大好きなんだ。
「わたしは、嫌いな相手にはここまで話さないよ? ポセイドンの事は知らないけど、ネーレウスのおじいちゃんの時のポセイドンは大好きだよ? 楽しい事が大好きで、イタズラ好きで。だから一緒にいると楽しかったの」
「ペルセポネ……」
「確かにわたしは甘いかもしれない。でもね? やる時はやるんだよ? 嫌いな相手に甘いとか言われたら怒っちゃうけど、ポセイドンの事は好きだから分かり合いたいの。ダメかな?」
「……(分かり合いたい?)」
「ポセイドンは……本当に自分の子供に会っていないの?」
「……あぁ。あんな容姿で産まれてきて……ショックで……」
「そうだね。確かに容姿はポセイドンには似ていないかな? でもね、すごく優しいんだよ? いつもわたしを大切に想ってくれるの」
「……? 何がだ?」
そういう事だよね?
吉田のおじいちゃん……
あの人が、ポセイドンの息子さんなんだよね?
「そうだなぁ」
吉田のおじいちゃんが満足そうに笑っているね。
さっきポセイドンの事を『かわいい孫』って言いながらも冷たくしたのは子供を化け物扱いしたあげく、群馬で傷つきながらわたしの為に頑張っていたお父様を『遊んでいた』って勘違いしていたからなんだね。
「本当にいいの? 今、ポセイドンの子供が幸せに暮らしていたら絶対に邪魔しない? 無理矢理連れ去ったりしない?」
「……とてもあの子を受け入れられない。わたしの子だとは思いたくない」
「そう。心は……時に自分にさえ分からない事があるって言っていた種族王がいたけど……ポセイドンはきっと後悔するよ? すごく立派に育ったから。誰からも信頼されて尊敬されて、素敵なの。だから……もしその子供にどうして捨てたんだって言われたら、醜かったからなんて絶対に言わないで欲しい。あの人の傷つく姿を見たくないから」
「ペルセポネ? あの醜かった子の今を知っているのか? わたしは……あぁ……少し一人で考えたい。ヘスティアちゃん、悪いが紐を解いてくれ」
「……え? そうね……分かったわ」
ヘスティアが紐を解くとポセイドンがゆっくり立ち上がる。
「……ペルセポネ、わたしは……自分勝手のろくでなしか?」
ポセイドンが辛そうで寂しそうな表情で尋ねてくる。
「……それはわたしが決める事じゃないよ? これからいくらだってやり直せるから。でも……子供にはきちんと謝って欲しいな。寂しい思いをさせてごめんねって……」
「寂しい思い……か」
「ペルセポネ……わたしの子を譲るのはもう少し待ってくれ」
「うん。ポセイドンの心が落ち着くまでいつまでも待つよ?」
「全く……ペルセポネには、かなわないな。今度、遊びに来ればいい。海の宮殿を案内してやろう」
こうして、ポセイドンは海の宮殿に帰っていった。
自分の心と真剣に向き合うんだね。
これから、子供とどうなっていきたいのかを考えるのかな?
「あれ……? 待って? あの……ヘスティアちゃん? わたしの紐は解いてくれないの?」
お父様はまだ縛られていたのか。
床に転がっているね。
「うわあぁん! ヘスティアちゃんってばぁぁ!」
これが神様……
これがわたしのお父様……か。
さっきの話だと皆、お父様を好きだって感じだったけど実際は扱いが雑だよね。