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お父様のこういうところが好きなんだ

「ペルセポネェ……遊びに来てくれたの?」


 お父様の執務室にプリンアラモードを持って来たけど……

 珍しく、すごく真面目に仕事をしているね。

 嫌そうな顔はしているけど……


「偉いね。ちゃんと仕事をしていたんだね」


「えへへ。明日の群馬の温泉の予約をして来たんだ。頑張って仕事をしないとキャンセルさせるってデメテルちゃんに言われてね……」


「それは大変だね……ふぅん。わたしがお父様の代わりにやる仕事ってこんな感じなんだね」


 山積みの書類がテーブルいっぱいにあるよ。


「うん。ちょっと見てみる?」


「神様の書類なのにいいの?」


「はは! 大丈夫だよ。ほら、これは中流の天族の揉め事を解決して欲しいって書いてあるんだよ。こっちは隣の家の木が庭に入り込んでくるから何とかして欲しいって……こっちのは隣の家の聖獣が鳴いてうるさいから何とかして欲しい……はぁ……これって神様の仕事なのかなぁ?」


「確かに……地域の揉め事を解決する人みたいだね」


「うぅ……面倒だなぁ……」


「でも、これってすごい事だよね。それだけ天界が平和って事でしょ? お父様が頑張っているから天界が平和になったんだよ」


「ええ!? えへへ。そうかなぁ……そうだよねぇ……」


 すごく嬉しそうだね。


「あれ? こっちに数字が書いてある本が置いてあるね? 付箋がいっぱい挟んであるよ」


「ん? あぁ……数学者かぁ」


「数学者?」


「ほら、前の世界にも難しい数学の問題を解きたいとか、暗号を解読したいとか……難しくて分からないけどそういう人がいたでしょ? お父様は遊んで暮らしたいから良く分からないけど」


「あはは。お父様らしいね。でも、そういうところが好きだよ?」


「え? 本当?」


「うん。群馬にいた頃は宿題をやる振りをして二人で遊びに行って、おばあちゃんに怒られたよね」


「はは! そうそう。お月ちゃんは怒ると怖いからね」


「ん? この数学の問題集って『人間と魔族の世界』の物じゃないかな?」


「うん。天族も時々観光みたいな感じで遊びに行っているんだよ。あまり深く関わらないのが条件なんだけどね」


「そうなんだね」


 やっぱりわたしも人間には深く関わらない方が良さそうだね。

 神様の娘だからって特別扱いはダメだよね。


「でも、天界には数学とかは無いんじゃないかな? 良く分からないけど……お父様は一度も計算をしていないよ。プライドの高い天族には人間に『教えて欲しい』なんて言えないだろうし」


「なるほど。それでお父様に教えて欲しいって言うんだね」


「面倒だなぁ。ずっと群馬にいたから分からなくはないんだけど……かわいい女の子じゃないからなぁ。教えたくないなぁ」


『人間と魔族の世界』の数学は前の世界の小学校低学年くらいのレベルみたいだからね。

 掛け算ができれば天才なんだよ。


「……ヘラに聞かれたら大変だよ?」


「うぅ……」


「あ、はい。約束のプリンアラモードだよ? アイスクリームが溶ける前に食べてね?」


「うわあぁ! やったぁ! 缶詰のサクランボも乗ってる!」


「うん。お父様はこのサクランボが好きだからね。じゃあ、わたしはケルベロスにも渡してくるね?」


「モグモグ。うんっ! えへへ。おいしいなぁ」


「ふふ。お父様……口にクリームが付いているよ?」


「ん? えへへ。おいしいから慌てちゃった」


「……お父様は……」


「ん?」


「わたしが産まれた時……嬉しかった?」


「ん? もちろん! かわいい卵から孵ったペルセポネはすごく小さくてすごくかわいくて……お父様は世界一の幸せ者だよ」


「……えへへ。良かった……」


「ん? どうかしたの?」


「もし……もしもだよ? わたしが魔族みたいな容姿で産まれてきたら……どうしてた?」


 わたしを捨てたりしたのかな?


「ん? あはは。そんなのどうもしないよ。ペルセポネはペルセポネだからね」


「わたしは……わたし?」


「お父様はペルセポネのお父様なんだから。ペルセポネはお父様の娘なんだから。容姿なんて関係ないし何も変わらないよ」


「お父様……うん。……ありがとう」


 お父様らしいね。

 怖いくらいに純粋で真っ直ぐで……

 わたし……

 お父様の娘になれて本当に幸せだよ。

 

 ……でもわたしの魂は、吉田のおじいちゃんとおばあちゃんの息子なんだよね?

 二人は、わたしが『お父さんお母さん』って呼ばなくても悲しくならないのかな?

 わたしが違う人を『お父様お母様』って呼んでいる姿を見て辛くならないのかな?

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