おばあちゃんの秘密(7)
「へへ。おばあちゃんの抱っこ……大好きだよ」
群馬にいる頃からわたしは抱っこが大好きだったよね。
「……月海……月海は赤ん坊の頃から変わらないわね。群馬で……初めて抱きしめたあの時から……何も変わらないわ。小さくて……柔らかくて力を入れたら壊してしまいそうな危うさがある……」
おばあちゃんの話し声が小さく震えている……?
「わたしはもう大きくなったから壊れたりしないよ? それに、今は力持ちだし……」
「……その真っ直ぐな心の事よ? 心配で仕方ないわ……」
「大丈夫。強くなれたの……わたし……この世界に来て心も強くなったんだよ?」
「……そうね。そうだったわね……ずっと見てきたわ。ペルセポネ……よく頑張ったわね。これからは幸せな事しか起こらないわ? 全て、ペルセポネが頑張ってきたからよ?」
「わたしが頑張ってきたから?」
「敵だった魔族が家族になったのも、嫌いだった人間を好きになったのも……ウラノスが癒されたのも……全てペルセポネが頑張ったからよ? 真っ直ぐな愛で包み込んでくれたからなの」
「敵だった魔族……ウェアウルフ族とグリフォン族の事?」
「そうよ……ペルセポネは魔族が好きなのね」
「うん。皆優しくてかわいいの」
「ふふ。そうね。全ての天族がそう思えれば……天界で容姿の違う天族が産まれても迫害されずに済むのにね」
「遥か昔のベリアルとわたしみたいに……?」
「……全く同じ生き物はいないわ。同じ人間でも、同じ魔族でも、同じ天族でも……皆それぞれ違うでしょう?」
「個性……?」
「そうね。皆それぞれ違う事は分かっているでしょう? 全く同じではないから。相手の方が鼻が高いとか顔が小さいとか……他人を羨んだり。自分の方が賢いとか……ね。でも、あまりに違いすぎる容姿だと……拒絶されて受け入れてさえもらえない。最初からいなかったかのように……汚ならしい物を見るような軽蔑の瞳……わたくしの愛しい子供達……」
「おばあちゃん……」
「あのまま天界にいたとしても……わたくしの子供達は迫害されていたはずよ。でも……わたくしはどうしても手放したくなかった。愛していたの……お腹の中で少しずつ大きくなっていく命を愛さずにはいられない……やっと『産まれてきた卵』から孵った子供達が……魔族のような容姿でも……わたくしは……愛しているの。もう誰にも奪わせない……ペルセポネ……ベリアル……タルタロスの子達も……今度こそ……幸せになるのよ」
おばあちゃんの強い決意が伝わってくるよ。
でも、優しく抱きしめてくれる温かさは群馬にいる頃から同じだね。
産まれてきた子供を捨てられた悲しみ……か。
想像もできないくらい辛かったはずだよ。
今までは吉田のおじいちゃん側からしかこの出来事を考えてこなかったけど、子を捨てられた母親の気持ちは……言葉では言い表せない程の苦痛だったはずだよね。
 




