吉田のおじいちゃんと天界(10)
「口でならなんとでも言える。ペルセポネは自分の子が化け物だったら耐えられるのか?」
ポセイドンは子供の容姿の事でかなり傷ついたんだね。
でも追い出したり捨てたりなんて絶対にダメだよ。
「わたしとハデスの子供がヴォジャノーイ族の姿だったらっていう事?」
「そうだ。気持ち悪いカエル人間の姿だったらどうだ?」
「……ポセイドンはヴォジャノーイ族の姿をどうして醜いと思うの? ヴォジャノーイ族の皆はすごくかわいいよ?」
「かわいい?」
「そうだよ? わたしの知っているヴォジャノーイ族の皆は強くてたくましくて、でも優しくて……全然醜くなんてないよ? 実の兄のハデスをヴォジャノーイ族の姿だからって醜いと考えていたの? 酷いよ。さんざんお世話になったんでしょ? 見た目が変わっても中身は変わらないのに……」
「ペルセポネ……確かに世話にはなったが……」
「ポセイドンに教えてあげるよ! ヴォジャノーイ族のかわいさを! まずね、あの瞳だよ? キラキラ輝いてね? 構って欲しいと子犬みたいに瞳をキラキラさせてね? しかも、あの大きい身体からは想像できないくらい繊細で、いつもわたしが笑顔になれるように考えてくれて。ヴォジャノーイ王なんて絵を描くのがすごく上手いんだよ? 戦士のおじちゃん達は、いつもクッキーとかをお土産に持ってきてくれてね? 自分を一番に褒めて欲しくて……」
「いつまでその話は続くんだ?」
「いつまでだって話せるよ? だってヴォジャノーイ族の皆はすっごくかわいいんだからっ! それでね? いつもわたしが抱きしめてあげると嬉しそうに優しく抱きしめ返してくれてね? この時の嬉しそうな顔ときたらもう最高にかわいいの! それから、ヴォジャノーイ族の……」
「……もういい。わたしとペルセポネは分かり合えない。同じ思いをしていないからな。化け物の子を持たないペルセポネには分からないさ」
「じゃあ、わたしがポセイドンの子供の親になってもいい?」
「は? 意味が分からない……」
「その代わり二度とその子の親だって思わないで?」
「……? 元からあんな化け物、子だなんて思わない」
「……ポセイドンはかわいそうだね。愛情の前では容姿なんて……種族の違いなんて何の意味もないのに。第三地区や幸せの島では、どんな種族でも皆仲良く暮らしているよ? ネーレウスのおじいちゃんとして見てきたんじゃないの?」
「綺麗事だけじゃ生きていけない。わたしの心の痛みがペルセポネに分かるか?」
「じゃあ、捨てられた子供の心の痛みがポセイドンには分かるの?」
「……わたし達は分かり合えない。同じ立場にいないからな。それが答えだ」
それが答え?
もう分かり合えないっていう事?
ポセイドンが辛そうな顔をしている。
まだ話を終わりにするわけにはいかないよ。
ポセイドンも悩み続けていたんだ。
だからこんなに辛そうなんだ。