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遥か昔のわたしの心は、今の楽しそうなベリアルの姿を見て安心したんだね

「今からアカデミーに戻って先生にドレスとかを作らないように言ってくる!」


 ベリアル……

 残念だね。

 ベリアルがやめろって言っても誰もやめるはずがないんだよ。

 皆もベリアルのかわいい姿を見たいんだから。


「わたしも行くよ。夕方に露店商市場に行って、その後に魔術科の広場に行かないと……」


「それはダメだ。誰がぺるみに神力で攻撃したか分からないんだぞ? 危険だからぺるみはしばらくアカデミーは休め」


 ベリアルは自分も大変なのに、わたしの心配をしてくれるんだね。

 本当に優しいよ。

 でも……


「イヤだよ。あと二ヶ月しか通えないんだから。それより……誰かがわたしを攻撃したの?」


 攻撃されたにしては軽く済んだよね?

 

「ペルセポネ……」

 

 お父様がわたしの髪を撫でながら泣き始めたね。


「お父様……泣かないで?」


「だって……あの時を思い出して……うぅっ……」


 あの時?

 天界でファルズフに刺された時の事かな?


「わたしはもう平気だから」


「でも……心配したんだよ? このまま目を覚まさないんじゃないかって……」


「お父様……」


「もうずっと天界にいてよ……ね? お父様が守るから」


「それは無理だよ。わたしは冥界のザクロを食べたから来年からは冥界で一年の三分の一を過ごさないといけないし……」


「ゼウス……心配なのは分かるわ? でもずっと守るのは無理よ。相手はゼウスよりも強いんでしょう? しかも二人なのよ? どう守り続けるの?」


 お母様?

 相手が二人?

 しかも神様のお父様よりも強いなんて……

 あぁ……

 そういう事か……

 これ以上は考えたらダメだ。

『心が聞こえる力がある人達』がいるからね。

 

「でも……でも……ペルセポネが苦しむのはイヤなんだよ……」


「ゼウス……落ち着いて? 大丈夫よ。その二人は絶対にペルセポネを傷つけたりしないわ?」


 お母様はその二人が誰だか分かっているみたいだね。

 って事は……心の声が聞こえる吉田のおじいちゃんとゴンザレスにもばれているのかな?

 お母様はおじいちゃんとゴンザレスの力を知らないからね。

 あれ?

 でも二人はいつも通りだよ?

『あの人』が聞こえないように何かしたのかな?


「デメテルちゃんはその二人が誰だか分かるの?」


「それは……わたしの口からは言えないわ? でも大丈夫よ。ペルセポネが倒れたのはその二人が攻撃したのではないはずよ? きっと何かそうしなければいけない理由があったのよ」


「知りたいよぉ。教えてよぉ」


「これは勘だから……本当にそうかは分からないの。でも……母親としての立場で考えればゼウスにも分かるはずよ?」


「母親としての? うーん。やっぱり分からないよ」 


「ふふ。いつか時が来たら本人が話してくれるはずよ」


 お母様は素敵だね。

 あの二人を信じているんだ。 


「お母様……わたしもそう思うよ? わたしも二人が話してくれるのを待つよ。わたし達には永遠の時があるんだから。気長に待つよ」


「ふふ。ペルセポネは賢いわね。そうね……急ぐ事はないわ。ゆっくりゆっくり前に進めばいいのよ。ペルセポネは眠っていたから知らないわね……ベリアルは一歩踏み出してペルセポネを守ると言ってくれたの。立派だったのよ? 『オレがぺるみを消させない』と言ってずっと抱きしめさせてくれたの」


「やめろよ! 恥ずかしいだろ!?」


 ベリアルが……?

 あぁ……

 

「もうわたしは必要ないのね……」


 ……?

 え?

 今……

 わたしが話したの?


「ペルセポネ……?」


 お母様が驚いた表情でわたしを見つめている……?

 やっぱりわたしが話したんだ……


「ぺるみ……? ぺるみが必要ないなんて……どうしたんだよ?」


 ベリアルが慌てているね。

 

「……あれ?」


 わたし……泣いているの?

 あぁ……

 そうか。

 ベリアルが創り出した遥か昔の別人格が泣いているんだ。


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