吉田のおじいちゃんと天界(9)
「まぁ、それもあるわね。でも、一番の違いはゼウスは大切な家族を何があろうと守るって事よ。子を捨てたポセイドンとは違うの」
ヘラ……
わたしの事を言ってくれているのかな?
お父様はわたしの為に神の座から降りたんだよね。
「さっき『ゼウスばかりかわいい娘が産まれて、しかも異世界でおもしろおかしく遊んでいたから』みたいな事を言っていたわね?」
お母様?
怒っているの?
「ゼウスは遊んでいたのではないわ? グンマの集落の人達に申し訳なくて……心を痛めながら、ただペルセポネの為だけに頑張っていたの。分かる? ゼウスには優しい心があるのよ? だからわたし達はゼウスの側にいるの」
……お母様の言う通りだね。
お父様はすごく優しいんだ。
かなり不器用だから周りの人達が支えてあげないといけないけど……
それも面倒だと思わせないくらい優しいんだ。
「ポセイドン、見た目なんて関係ないんじゃないかな? お父様はわたしが魂だけの時も、月海の時もルゥの時もずっと大切にしてくれたよ? 自分の子供ならどんな容姿でもかわいいんじゃないのかな? 絶対に化け物なんて言ったらダメだよ?」
「ペルセポネは知らないからそんな事を言えるんだ。とても……天族とは思えない姿だったんだ」
どんな容姿だったのかな?
それに、過去形なのが気になるよ。
「だった……? 亡くなったの?」
「それすら知らない。会いたくもないから……会っていない」
「え? そんな……もし、子供が困っていたら……とか考えないの?」
「……困る? 何に?」
「ポセイドンは……本気でそんな事を言っているの? この広い世界に独りきりになった気持ちが分からない? 頼れる家族がいない辛さが分からない? 実の父親に化け物だからって捨てられた事を知ったら……こんなに辛い事はないよ?」
「……ペルセポネは、ペルセポネの言う事はいつも綺麗事ばかりだ。産まれた子が化け物だったわたしの気持ちが分かるか?」
「わたしは……ずっと月海として群馬の人間の中で育ってきたよ? だから、この世界に来て初めて魔族を見たの。でもね? 食べられちゃうかもって不安になる事はあっても、気持ち悪いとか化け物だとかそんな風に考えた事は一度もないよ?」
「ハデスがヴォジャノーイ族の醜い姿のままでも愛せたと? 天族の美しいハデスに戻ったからそんな事が言えるんだろう?」
「わたしは、ヴォジャノーイ族のじいじだった時のハデスを好きになったんだよ? じいじはいつも優しい瞳でわたしを見つめてくれて、優しく髪を撫でてくれたの。見た目なんて関係ないよ?」
「そうだ。ルゥだった頃のペルセポネは、ヴォジャノーイ族のわたしの姿を醜くないと言ってくれたのだ」
ハデス……
優しく微笑んでいるね。
ハデスはヴォジャノーイ族の姿を醜いと思って傷ついていたんだよね。
全然醜くなんてなかったのに。




