誰もオレの事なんて好きじゃないんだ
今回はベリアルが主役です。
オレは、ぺるみの近くにいたらダメなのか……
荷物を持って誰もオレを知らない場所に行こう。
荷物……か。
何を持てばいいんだ?
とりあえずオレの部屋に行こう……
ぺるみはまだ辛そうにしているのに……
オレには何もできなくて情けないよ。
あぁ……
一人になったら涙が止まらない。
天界じゃずっと一人が当たり前だったのに……
第三地区での幸せが……オレには温かすぎたんだ。
「ベリアル……」
ばあちゃんが部屋のドアの隙間からオレを悲しそうな瞳で見ている……?
「ばあちゃん……オレは……」
『出て行く』って言って『やっと嫌われている事に気づいたか』って言われたら……?
怖いよ。
もし、ばあちゃんがオレを嫌いだったら……
「ベリアル……ベリアルはもっと自分に自信を持て。分かるか?」
「……? ばあちゃん?」
『自信を持て』って……?
「今にも消えちまいそうな顔をしてるぞ?」
……!
だって……
オレは……
「オレは……ここにいたらダメなんだ……」
「……どうしてそう思う?」
「え? だって……じいちゃんがゴンザレスと旅行してこいって……」
「全く……あの子は相変わらず勘違いばかりするのね」
……?
ばあちゃん?
いつもと話し方が違う……?
「ばあちゃん……?」
「あぁ……ベリアルは……難しく考えすぎだなぁ」
あれ?
いつものばあちゃんだ。
「……? 難しく考えすぎ?」
「そうだぞ? この第三地区にいる皆はベリアルが大好きなんだぞ? それはベリアルもよく分かるだろう?」
「……でも、それは……オレがぺるみのお気に入りだからで……」
「それで皆がベリアルをかわいがっていると思ってるんか?」
「だって……実際そうだから……」
「ばあちゃんは、ベリアルがベリアルだから好きなんだぞ?」
「でも……だけど……」
「ベリアル……今まで辛い生き方をしてきたから……自分には大切にされる価値が無いって思うのか……?」
「……! それは……」
そうだ……
オレは『ルゥ』に会うまで誰かに大切にされる事なんて無かったんだ。
ハデスはオレを差別はしなかったけど愛情をくれたわけじゃなかった。
でも、あの時ルゥに出会ってからは毎日心が温かくて……オレは心から笑えたんだ。
誰からも虐げられないし、イヤな事をさせられない日々を過ごせた。
不思議だな。
ルゥに会ってからは毎日が幸せだった。
皆がオレをかわいがって好きだって言ってくれたんだ。
天界では一度だってそんな事は無かったのに。
「ベリアルがいなくなったって知ったら、ぺるみは見つかるまで捜し続けるだろうなぁ」
「……それは……でも……オレは邪魔なんだろ?」
「邪魔なんかじゃねぇさ。ぺるみはベリアルが自分のせいでいなくなったって知ったらどう思うだろうなぁ」
「……ぺるみは……泣くと思う」
「どうして、そう思うんだ?」
「え? だって……ぺるみは……オレが好きだから……? え? あぁ……オレは……なんて……最低な……」
ぺるみはいつだってオレを好きだって言ってくれていたのに、オレは苦しむぺるみを見たくないからって逃げようとしているんだ……
じいちゃんに邪魔だって言われたくらいでいなくなろうとするなんて……
オレに幸せな居場所を作ってくれたぺるみを裏切ろうとしたなんて……
オレは本当に最低だ。
……ぺるみの看病をしたいよ。