ベリアルを吸えるなら変態だっていいよ
「もうそろそろ午後の講義が始まるね。クラスルームに帰ろうか……」
ベリアルの衝撃的な恋愛マスターの考えに皆が無口になったね。
まぁ、当然だよね。
「……うわぁ……王女様と王子様だぁ……」
ん?
マリーちゃんが、うっとりしている?
え?
もしかして皆はベリアルの強烈な発言に困惑しているんじゃなくて、王族のココちゃんとレオンハルトがいるから緊張しているの?
……あれ?
わたしも一応王女設定なんだけど……
全然緊張されていないような?
まぁ、確かにココちゃんとレオンハルトは立派な王族のオーラが出ているからね。
わたしから出るのは鼻血くらいだよ。
「ぷはっ!」
「ぷっ!」
……!?
吉田のおじいちゃんとゴンザレスは、またわたしの心の声を聞いたんだね!?
もう!
笑わないの!
「ん? じいちゃんはどうしたんだ? ゴンザレスも何かおもしろいのか?」
ベリアルは二人が心の声が聞こえる事を知らないからね。
突然笑い出したらそうなるよね。
「んん? いや……ヒヨコちゃんが立派な恋愛マスターだから感心したんだ。じゃあ、じいちゃんは露店商市場に戻るからなぁ。お散歩しながら行くからヒヨコちゃんはぺるぺるを頼んだぞ?」
「うん! 分かった。オレに任せとけ!」
くぅぅ!
得意気なヒヨコちゃんも激かわだね!
堪らないよ。
こうして皆でクラスルームに向かって歩き始めたんだけど……
貴族は自分よりも地位の高い相手には、話しかけてもらえるまで話したらダメなんだよね。
クラスの皆がお願いするキラキラの瞳でわたしを見つめてくるね。
マリーちゃんとジャックもだよ……
「えっと……クラスの皆と、魔術科のマリーちゃんとジャックだよ? 皆わたしの友達なの」
ココちゃん達が察してくれたみたいだね。
「はじめまして。わたしもペリドットの友人なの。お会いできて嬉しいです」
ココちゃんは平民相手でもちゃんと挨拶できて偉いね。
イヤな顔ひとつしないよ。
「うわあぁ! あの……はじめまして! すごいね。わたし達平民に挨拶してくれたよ?」
「すごいよ。本物の王女様だ……」
マリーちゃんとジャック……?
わたしも一応王女なんだけど……
「ぷっ! ぺるみ……気にするなよ……ぷぷっ」
抱っこされているベリアルが、わたしを見ながら笑っているね。
「……!? 気にしてないもん! それより、さっき、マクス達にわたしの事を鼻血垂らしの変態って言ったみたいだね? 赦さないよ?」
「本当の事だろ?」
「うう! 本当だけど……でも……悪口を友達の前で言ったから……吸わせてもらうからねっ!」
「はぁ!? 意味が分からないぞ!? 吸われてたまるか! オレは高い所を飛んで行くからな」
ベリアルが重そうに翼をバタバタさせながら飛び始めたね。
「ふふふ。それほど長くは飛べないはずだよ? さっき、プリンアラモードをいっぱい食べていたからね。疲れてくるのを待って下がってきたら吸うよ!」
「うわあぁぁん! 変態がいるよぉ!」
変態がいる?
ふふふ。
そうだよ。
わたしは変態なんだよ。