マクスは、女心がまるで分かっていないんだね(2)
「はい。領地の子なんですけど、すごいんですよ! 弓と剣の腕が一流で。へへ」
すごく嬉しそうにマクスが話しているね。
「マクスは、その子の事が好きなんだね」
「男爵家のオレに嫁に来てくれるだけでもありがたいのに、顔もかわいいし性格もいいんですよ」
「ふふ。マクスでも、女の子にそんな事を言うんだね」
「はい! オレの好みの、ど真ん中なんです! 『この脳筋クソヤローが消えろ』とか言って。オレを見る時の『汚い物を見る目』が堪らないんですよ」
え?
心から嫌われているんじゃないの?
「……えっと……あはは……そうなんだね……」
これ以上は、かわいそうだから話題を変えよう。
何か他に話題はないかな?
クラスの皆も気まずそうにしているし。
「聞いてくださいよ! ペリドット様! この前その子と山に狩りに行ったんですけど、オレよりも獲物を狩っていてかっこ良かったんですよ!」
話題を変えられそうに無いね……
「えっと……マクスは強い子が好きなんだね」
「はい! でも……あんなに正確に弓を引くのにもう少しでオレに当たりそうになったんですよね。顔をかすったんです。オレに夢中で手元が狂ったのかな? あはは」
「……マクスを狩ろうとしたんじゃないよね」
クラスの皆が、かわいそうなものを見る瞳でマクスを見つめているよ。
「え? オレの心はもう彼女に狩られてますよ。あはは」
「……いや、上手い事を言っている場合じゃないよ。確実にマクスを仕留めようとしているね。次からは常に気を抜かずに狩りに行ってね」
「え? どうしてですか?」
「狩り場に埋められたくなければね……」
「え? どうしてオレが狩り場に埋められるんですか?」
「……これ以上はわたしからは言えないよ」
「え? なんでですか? あ、そうだ。彼女と一緒に買い物に行った先で、少し待ってろって言われたからベンチで待っていたら二日間戻ってこなくて。二日後に慌てて戻って来たんですよ。腹でも下してたんですかね? 良く効く薬ってないですかね? 彼女、よくいなくなるんですよ。毎回便所に行ってるみたいで」
「便所って……まさかずっと外で待っていたの?」
「はい! 彼女が戻ってきてオレがいなかったら心配して捜し回るかもしれないし」
「……キライだから置いて行ったけど二日も帰ってこないから慌てて様子を見に行ったら、まだ別れた場所にいたから呆れ果てた……とかじゃないよね?」
「え? そんな事は無いですよ。オレ達は相思相愛なんですから」
「……わたし……今度、プリンアラモードをマクスと婚約者さんに作るからね? もしかしたら仲良くなれるかもよ?」
「え? オレ達は仲良しですよ? それに、甘すぎる物は苦手で……」
あぁ……
レオンハルトも初めて聞いた話だったのか、遠い目になっているし。
マクスの将来が心配になってきたよ。