マクスは、女心がまるで分かっていないんだね(1)
「ペリドット様……こちらでしたか」
アンジェリカちゃんとレオンハルトとマクスがピクニックをしている木陰に来てくれたね。
「ヒヨコちゃんにプリンアラモードを持って行ってもらったんだけど……迷惑じゃなかったかな?」
「あぁ……あの……」
ん?
アンジェリカちゃんが話しにくそうにしているね。
もしかして好きじゃなかったかな?
「悪口を言ってたから公女様は話しにくいんですよね」
マクスがニヤニヤ笑いながら教えてくれたけど……
「悪口!? ヒヨコちゃんがわたしの悪口を言っていたの!?」
「はい。変態の鼻血垂らしとか言ってましたよ? ぷふっ」
「……! やっぱり! もうっ! 帰ってきたら取っ捕まえてスーハーするんだから!」
「あはは! それはおもしろそうですね。あ、そうだ。プリンアラモード? でしたっけ? かなり騒ぎになってますよ? さっきも殿下と公女様が食べていたら皆が見てましたよ」
「恋が叶うって言われているみたいだね。でも、恋が叶うって言うよりは願いが叶うって言う方が正しいのかも……就職先が決まったクラスメイトもいるし」
「へぇ。やっぱり特別な食べ物なのかもしれませんね」
「普通に作ったんだけどね」
「ペリドット様の普通は普通じゃないですからね」
「……それ、よく言われるんだけど、わたしは普通なんだけど……」
「あはは! ペリドット様が普通ならオレは何なんでしょうね」
「……!? マクスにだけは、言われたくないよ!」
「え? オレは小心者の心優しい人ですから」
「はあ!? マクスが小心者!? あり得ないでしょ」
「ええ? オレはこう見えて気が小さいんですよ」
「気が小さい!? 黒曜石の馬車を普通にもらっていたよね?」
魔族でさえ怖がる、あのハデスから!
「え? あはは。だってあのお方は優しいから」
確かにハデスは優しいけど……
マクスはハデスを魔族だって思っているんだよね?
「やっぱりマクスは怖いものしらずだよ」
「そうですか? そんな事は無いと思うけどな……? それに、本当に怖いのは令嬢達の値踏みですよ」
「ん? 令嬢達の値踏み? 何それ?」
「リコリス王国に来て殿下の隣にずっといるから令嬢達がオレの価値を値踏みしてるんですよ。でも、オレは男爵家だから誰も近づいてきませんけどね」
「……それで値踏みか。初日から誰も近づいて来なかったの? マクスは見た目は良いからね」
「いえ、初日は四、五人キャーキャー言いながら話しかけてきたけど、どうしてかな? すぐに真顔になって舌打ちされましたよ」
「舌打ちって……何かあったの?」
「え? すごい化粧が厚いけど息できるのか……とか、髪がモジャモジャしてるけど鳥でも住んでるのかとか?」
「完全に嫌われたんだよ……」
「え? 何で?」
「……もうわたしから言う事は無いよ」
「え? 何が原因か分かったんですか?」
「……ところでマクスには婚約者はいるの?」
……まさか、いないよね。
いたとしたら婚約者は、かなり苦労しているはずだよ。