プリンアラモードは恋が叶う食べ物? (3)
「そっか。ふふ。あ、アカデミーにいる弟さんにプリンアラモードを渡してきたよ? 領地にいる弟さんには喜んでもらえたかな?」
「ありがとうございます。とても喜んでいました。初めてチョコレートやアイスクリームを食べて『口が喜んでいる』と言っていました」
リリーちゃんは、すごく素敵な笑顔だね。
「え? あはは。マクスは口が溶けそうだけど、弟さんの口は喜んでくれたんだね」
「口が溶ける……?」
「不思議だよね。同じ物を食べているのに幸せな気持ちになったり苦手だったり……あのね? 今、アカデミーの女の子達が騒いでいるんだよ? 『プリンアラモードを食べると恋が叶う』って」
「え? あ……恥ずかしいです……」
リリーちゃんが真っ赤になっているね。
「リリーちゃんも先生も幸せそうだし。今プリンアラモードを食べているマリーちゃんとジャックも仲良しさんだし。わたしの婚約者も少し前まで甘い物は苦手だったんだけどプリンだけは食べられたの」
魔族だった時は肉食……だったから人間みたいに食事はしなかったけどわたしが作ったプリンは毎日食べてくれたんだよね。
懐かしいなぁ。
天族の姿に戻ってからは毎日一緒に食事ができて嬉しいんだ。
「へぇ……プリンは幸せになれる食べ物なのかもしれませんね」
「えへへ。そうだね。甘くてプルプルで食べると幸せになれるよね」
「あの……ペリドット様にお願いがあるんです」
「ん? リリーちゃんのお願いなら叶えてあげたいけど……」
「実は……わたしの領地でプリン屋さんをできないかと思いまして」
「え? リリーちゃんの領地で?」
「はい。わたしとジャックさんで小さいお店を始めようかと」
「うわあぁ! 素敵だね!」
「それで……思ったんです。わたしの領地はとても田舎……と言いますか。ですが、さっきヒヨコ様が温泉を見つけてくれたんです」
「ん? 温泉? 火山があるのかな?」
この世界ではドワーフのおじいちゃんが作った物しか見た事がないけど。
「あれは精霊だな。モグモグ」
ベリアルがピクニックのサンドイッチを食べながらご機嫌で話しているね。
「精霊?」
「リリーの領地に下位精霊がいっぱいいるんだ。優しい人間がいっぱいの国だからな。精霊が作った温泉なら観光客が次から次にやって来るはずだ。でも、まだ人間が入るには整備が必要だからな。リリー達が卒業する頃には整備も終わるだろう。そうなったら温泉の近くに宿を作ったり食事をする場所も必要だろ?」
「なるほど……でも、せっかくの豊かな自然が壊されないかな? 綺麗な川とかリスのいる木もあるんだよね?」
「ん? その辺りは大丈夫だ。オレが精霊と話してきたからな。木を切らずに今ある自然を残して整備するってリリーの両親と約束したんだ。山の中にある温泉。田舎でのんびりできる宿。リリーの家族も喜んでたぞ?」
「なるほど。それなら安心だね」
「父が明日にも陛下に精霊様の温泉が湧いたと知らせる為に王都に来ると言っていました」
リリーちゃんが嬉しそうに話しているね。
「そう。ヒヨコちゃんと一緒に来たら良かったのに」
馬車での移動は疲れるからね。
「身体が……あの……裂ける話を聞いたら怖くなったらしくて……」
「あはは。そりゃそうだよね。リリーちゃんは怖くないのかな?」
「わたしはヒヨコ様を信じていますから」
「ふふ。そうだね。まだアカデミーに来て少ししか経たないけど仲良くなれて嬉しいよ」
「わたしもです。あ、そうだ。ジャックさんとジャックさんとジャックさん!」
ん?
リリーちゃんが三回ジャックって言ったね。
どのジャックを呼んだのかな?
区別がつかないよ。
本人達は分かったみたいだね。
さすがだよ。




