プリンアラモードは恋が叶う食べ物? (1)
「ペリドット様? ぼーっとして……大丈夫ですか?」
アメリアちゃんが心配そうに話しかけてくれたね。
本当に優しい子だよ。
「あ……うん。えっと……プリンアラモードがまだ八個残っているんだよね」
「そのバスケットに入っている物ですよね?」
「うん。氷の魔法石で冷やしてあるんだけど……ちょっと困った事になってね」
この世界の補正力の事を話しても困らせちゃうからね。
違う話をしよう。
「困った事……ですか?」
「さっきリリーちゃんの弟さんにプリンアラモードを渡しに行ったら、廊下にいた女の子達が『プリンアラモードを食べると恋が叶う』って騒いでいたの」
「え? あ、確かに先生も、ジャックさんとリリーさんも恋が叶いましたね」
「それだけじゃないの。リリーちゃんの弟さんも恋人ができそうな感じで……」
「なるほど……それであの木陰から令嬢達がこちらを見ているのですね」
「あ……えっと……アメリアちゃんって呼んでもいいかな?」
さすがに伯爵令嬢じゃ失礼だよね。
「……! はい、とても嬉しいです!」
「えへへ。名前で呼ぶとすごく仲良しになれた気がするね」
「はい。心が温かくなりますね」
「アメリアちゃんはすごく素敵な表現をするんだね。でも……えっと……たぶんだけどアメリアちゃんは頭が良いよね? どうしてこのクラスにいるのかな?」
このクラスはバカクラスって言われているくらいだから……
不思議だったんだよね。
「あ……それは……公女様に合わせてテストを受けていて……」
「え? あ……スウィートちゃんに? じゃあ、スウィートちゃんの学力は……」
「……あの……はい。勉強がキライで……わたしが教えたりもしたのですが……陛下の事で頭がいっぱいのようで。ですが家門同士の付き合いもありまして……」
「なるほど……だからスウィートちゃんよりも高い点数をとるわけにはいかなかったんだね」
「……はい」
「でも……アメリアちゃんの評判が悪くなっちゃうんじゃないかな? 婚約者さんとか……いるんだよね? 大丈夫? 心配しちゃうんじゃないかな?」
「え? あ……大丈夫です。彼には全て話してありますから。ふふ。彼はヒヨコ様に夢中で次は何のお菓子を用意しようかと楽しみにしているのですよ?」
「ん? え? 婚約者さんが? ヒヨコちゃんにお菓子を? クラスの誰かなのかな?」
「え? あ……話していませんでしたね。わたしの婚約者は宰相をしています」
「……!? ええ!? ちょっと待って!? え? あの宰相!? メガネの!?」
「ふふ。はい。婚約したのは宰相になるずっと前でした。彼はその頃はまだ王都には来ていなくて……隣の領地同士の幼馴染みで」
「……アメリアちゃん……良かった……本当に良かったよ」
「え? 何がですか?」
あのままスウィートちゃんのおじいさんが令嬢誘拐の犯人にされていたらもしかしたら親戚の宰相まで巻き込まれていたかもしれないんだよね。
「あ、いや……宰相と……結婚するんだね。幸せなんだね」
「ふふ。はい。彼が宰相になってから、伯爵家のわたしではふさわしくないのではないかと身を引こうとしたのですが……」
「そんな……」
「彼が……『ヒヨコ様のような赤ちゃんが欲しい』と」
「……? ん?」
宰相がヒヨコちゃんみたいな赤ちゃんが欲しいって?
ヒヨコ……?
人間じゃなくて?




