友達をバカにするなんて赦せない(3)
「魔力が無い世界……か」
ジャックが呟いたね。
寂しそうな嬉しそうな……
複雑な表情?
「ジャック? ……どうして少し嬉しそうなのかな?」
「え? あぁ……オレとマリーは少しだけ魔力があってそれでアカデミーに水神様と話ができる人を捜しに来ました。でも、魔術科にいる力を持つ貴族は皆……弱い者を虐げて見下すような奴らばかりで……正直うんざりしてたんです。魔力なんて無ければ良いのにって……オレ達の国は皆仲が良くて。だから強い者は弱い者を守るのが普通だったんです」
「そうだったんだね。露店商市場の皆も魔力が無くて、魔法石も無いけどちゃんと生活しているから……魔法石も魔力もすごく便利だけど、実際もう人間は魔力なんて無くても普通に生活しているよね」
「魔法石を使っているのも一部の貴族だけだし……オレ達平民は火も水も自力で用意してますから」
「そうだね……えっと……じゃあ、わたしはどうすればいいかな? マリーちゃんとジャックの為ならどんな力にでもなるよ?」
「あ、あの……迷惑じゃなければアカデミー終了後に魔術科の広場に来てもらえませんか?」
「あ……ごめんね? アカデミーが終わったら露店商市場に行く事になっていて。その用事が終わったらでもいいかな?」
甘い物が好きなジャックに市場の相談役を紹介する約束をしたんだよね。
「はい。ありがとうございます。皆、遅くまで魔術の練習をしているから……ペリドット様に来てもらえたら嬉しいです」
「……でも、わたしは怖がられているんじゃないかな?」
「え? そんな事絶対にありませんよ! 平民の皆はペリドット様に憧れてるんですから」
「……? わたしに?」
「はい。ペリドット様は弱い者の味方ですから。それに酷い事をする貴族を懲らしめている姿がかっこいいって」
「わたしがかっこいい!? ただの『ど変態』なのに!?」
「あはは! ヒヨコ様はかわいいから仕方ないですよ。オレだってヒヨコ様が大好きです」
やっぱり変態だと思われていたみたいだね。
否定はしてくれないんだ……
「じゃあ、夕方……暗くなる前には魔術科の広場に行くからね?」
「はい。ありがとうございます。あの、さっき話した貴族達は練習には参加してませんから」
「平民の子達だけなの?」
「貴族で魔術科に来る事自体珍しいんです。だからほぼ平民しかいなくて」
「なるほどね。じゃあ、市場で甘い物でも買って行くね? 疲れた時は甘い物が一番だから」
「うわあぁ! 嬉しいです。じゃあ、突然来てすみませんでした」
「あ、良かったら一緒に食べようよ。もうお昼は食べちゃった?」
「あ……でも、オレ達がいたら……平民だし……」
「……ジャック……ほら、あそこにピクニックの用意をしてもらってあるの。でもあんなにいっぱいは食べられそうになくて。わたし達のクラスはさっきまで調理実習だったから。もし良かったら食べるのを手伝って欲しいんだ。せっかく作ってもらったのに残したら申し訳ないから」
「でも……貴族の皆さんは……イヤなんじゃ……」
ジャックが慌てているね。