卒業後の進路はどうするの? (1)
調理実習室に入るとクラスの皆が楽しそうに余ったアイスクリームと生クリームを食べているね。
「オレはクッキーにアイスクリームを挟んで……ほら、アイスクリームサンドイッチだ」
「おお! オレはアイスクリームと溶かしたチョコレートを混ぜて……ほら、チョコレートアイスクリームだ」
ふふ。
すごいね。
さっき見たばかりの食材なのにもうアレンジしているよ。
「皆、すごいね。まだイチゴは残っているかな?」
「イチゴですか? はい。まだたくさん残っていますよ?」
クラスの男の子が口の周りを生クリームだらけにしながら教えてくれたね。
幸せそうな顔を見るとわたしまで嬉しくなるよ。
「ふふ。ヘタを取ったイチゴを棒に刺して溶かしたチョコレートをかけると……ほら、チョコイチゴだよ?」
「うわあぁ! すごい!」
「他にも……余ったクッキーを砕いてイチゴを小さく切ってアイスクリームと混ぜて、上から生クリームをかけたら……クッキーイチゴパフェだよ?」
「おお! すごい!」
ふふ。
この男の子は甘い物が好きみたいだね。
「わたしもプリンアラモードを食べないとね。アイスクリームが溶けちゃうよ」
「はい! あぁ……幸せだなぁ。こんなに甘い物が食べられるなんて。オレの領地は貧乏だからこんなにおいしい物はなかなか食べられなくて」
「そうなんだね。今はタウンハウスに住んでアカデミーに通っているの?」
「あ……いえ。タウンハウスも維持費がかかるから持っていなくて。さっきのリリーさんも寮から通っているんです」
「そうなんだね。貴族は寮の費用は支払わないといけないのかな? 確か平民は無料なんだよね?」
「今の陛下に代替わりしてからは生活の苦しい貴族にはアカデミーに通う補助金が出るようになって。全額じゃないけど、かなり助かっています。そうじゃなかったらオレもリリーさんもアカデミーには通えなかったはずです。でも……それでもアカデミーに通えない貴族もいて……」
「そうだったんだね。補助金が出るまでは、どうやってアカデミーに通っていたの?」
「あ……いえ。オレもリリーさんも今の陛下になって補助金が出るようになってから通い始めたんです」
「じゃあ、わたしと入学時期はそんなに変わらないんだね」
「はい。他にも同じように途中から入学した学生が大勢いますよ? 皆陛下に感謝してるんです」
「確か……ジャックだよね」
「はい。オレもジャックですよ? ほとんど皆ジャックですから。あはは」
「ジャックは卒業後はどうするの?」
「あぁ……オレは三男だから領地から出ないといけなくて。今は卒業後の就職先を探してる最中なんです。アカデミー卒業って言えば良い就職先が見つかるかと思ったんですけど、やっぱり勉強ができないとダメで」
「……このクラスには、そういう環境の人間が他にもいるのかな?」
「あぁ……はい。さっきのジャックとリリーさんもそうだし……子爵家以下の貴族はなかなか就職先を見つけるのも大変で」
「うーん。じゃあさ、そういう皆で集まってお店をするのはどうかな?」
「え? オレ達で……ですか?」
ジャックがかなり驚いているね。