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プリンアラモードを大切な相手と食べよう(5)

「見栄?」


 結婚の持参金が見栄ってどういう事?

 

「自分の嫁は、いくら持って嫁入りしたとか……パーティーでそういう話がよくされるようで」


 この女の子の話が事実だとしたらかなりバカげた話だよ。

 自慢話の為に無理してお金を集めているって事?


「法律で決まっているんじゃないの!?」


「……はい。一番最初に持参金なんて愚かな事をした人を恨みます……」


「なるほど……じゃあ、その一番最初に持参金を支払った人間がどうしてそうしたのかが分かれば話が変わってくるんじゃないかな?」


「え?」


「例えば……娘さんが身体が弱くてお金を持たせて薬を買わせた……とか。そういう美談なら何に使うか分からない持参金制度を無くす事もできるんじゃないかな?」


「……たぶん、無理だと思います。以前にも同じ考えを持った令嬢が持参金を持たずに婚姻したのですが……周りの貴族からかなり虐げられたそうです。見せしめ……と言うのでしょうか。自分達は無理をして持参金を用意したのにお前は何の苦労もしないのか……と。その姿を見た弱い貴族達はその仕打ちを見て、持参金が用意できなければ婚姻はさせられないと思ったようです」


 それって……

 あれ?

 ジャックの母親も持参金を持たずに結婚したって言っていたよね?


「今の話って……男爵家の?」


「え? あ、いえ。違います。侯爵家です。時々男爵家同士では持参金を持たずに婚姻する事があるようですよ?」

 

「そうなんだね……難しい問題だね」


「貴族といってもわたしのような末端の男爵家では……いつも平民を羨ましいと思うのです」


「……平民を?」


「平民は貴族を優雅に暮らす幸せな人と思っているようですが、実際はそうではありませんから。平民にも辛い事は多いでしょうが……わたしは……男爵家だから婚姻を諦めるなんて耐えられそうにありません」


 見ていて辛くなるね。

 なんとかできないかな?


「はい。これを食べて元気だして? 食べかけだけど……」


 お?

 リリーちゃんの弟さんがプリンアラモードをあげているね。


「ジャックさん?」


 おお!

 リリーちゃんの弟さんもやっぱりジャックだったね。


「オレも男爵家だから苦労は分かるよ?」


「ジャックさん……」


「オレ……思うんだ。身分制度がなくなれば世界は平和になるのかなって……」


「……身分制度はなくならないわ。わたし達もわたし達の子孫も……ずっと苦しみ続けるの。……でもわたしは持参金が用意できないから子を授かる事は無いわね……」


「……オレも利用価値の無い男爵家の跡取りだから……オレに嫁いでくれる女性は貧乏くじを引く事になるよ。そんな人はなかなか見つからないけどね」


「ジャックさんは素敵な人よ?」


「え?」


「あ……いや……違うの……」


 お?

 この女の子は顔が真っ赤になっているよ。

 まさか……

 ジャックの事が好きなの?


「あの……オレ……ずっと……」


 ジャックもこの女の子の事が好き!?

 おお!

 プリンアラモードを作ってからこんな事が続くね。


 ……わたしは邪魔みたいだね。

 静かに調理実習室に戻ろう。

 いつの間にか食べ終わっていた空のお皿を持って……と。


 よし。

 二人に気づかれないようにクラスルームから出られたね。


 ……この世界の貴族はお金が無いと幸せには、なれないみたいだね。

 持参金が無いと結婚できないなんて。

 過去にいた勇気ある侯爵令嬢は今でも生きているのかな?

 どれくらい前の話なんだろう。

 見せしめで虐げられたなんて酷すぎるよ。

 その姿を見て誰も何も言えなくなった?

 はぁ……

 心が痛いよ。

 

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