調理実習ってワクワクするよね(8)
「これ……リリーさんの為に作って……あの……もし良かったら……食ベテ……クダサイ……」
ジャックが真っ赤になりながらプリンアラモードを手渡しているね。
カタコトになってかわいいよ。
「え? わたしの為に……? でもわたしはもう自分の分を作ったし……」
リリーちゃんが不思議そうな顔をしているよ。
「ずっと一緒に作っていたから……弟さんの分に時間をかけてリリーさんの分はトッピングが無かったみたいだし……もし良かったらリリーさんが作ったプリンアラモードを食べてもいいかな?」
「え? でも……」
「オレ……知ってるから。リリーさんが弟さん達の為に自分の時間を削ってお世話したり色々我慢している事。でも文句も言わずにそれを楽しいって……オレ……そんなリリーさんが……その……す……す……き……」
「……ジャックさん。わたしも……」
「ええ!? 本当に!?」
ジャックが興奮しながら叫んでいるね。
「わたしも弟さんに優しいジャックさんが色々我慢しているんじゃないかって……でも……弟さん思いのジャックさんは……とても素敵です」
ん?
恋心は伝わっていないみたいだね。
「あの……えっと……オレ……あの……そうじゃなくて……その……リリーさんの事が……」
「……え?」
「オレの領地は貧乏男爵家だし……オレは勉強もできないし運動もできないけど……何もあげられないけど……もしかしたら幸せにしてあげられないかもしれないけど……オレのお嫁さんになってくださいっ!」
ジャック!?
いきなり結婚!?
普通は『付き合ってください』じゃないの!?
「……! あの……でも……結婚の持参金が払えないから……」
「オレの母親も持参金は払っていないんだ……だから、心配いらないよ? あの……ほぼ平民みたいな男爵家だし……跡継ぎじゃないから何も持っていないけど……オレじゃ……やっぱり……ダメだよね?」
「わたしこそ……貧乏男爵家で……何もなくて……本当に良いの? わたしなんかで……」
「『なんか』なんて! オレは……オレには……もう……リリーさんしか見えなくて……」
「ジャックさん……わたしも……ずっとジャックさんを見てたの……」
おぉ……
これは邪魔をしたら悪いね。
「ん? モグモグ。なんだ? ジャックはリリーと結婚するのか?」
ベリアルがクチバシの周りを生クリームまみれにしながら話しかけているね。
今は話しかけちゃダメなのに。
でも空気の読めないヒヨコちゃんも超絶かわいいよ。
「ぺるみは皆に教える為に大量に作ってたよな?」
プリンアラモードの事かな?
「うん。ここに二十個くらいあるけど?」
ベリアルにあげる為にいっぱい作ったんだよ?
ぐふふ。
今日こそ『ぺるみ大ちゅき』って言わせてみせるよ!
「そうか、じゃあ、それをバスケットに入れろ」
「え? どうするの?」
「ジャックとリリーの家族に会ってくる。こういう事は急がないとな!」
「え? まさか……ヒヨコちゃんが二人の結婚を両親に話しに行ってくれるの!?」
「オレが行っただけじゃ家族も意味が分からないだろ? ジャックとリリーも行くんだ! ほら、エプロンを外して挨拶に行くぞ?」
確かに、いきなりヒヨコちゃんが来て『お前達の子供が結婚するぞ』って言っても意味が分からないよね。
前みたいに唐揚げにされそうになって終わりだよ……
あぁ……
ベリアルが、ボンネットとピンクのかわいい服を脱ぐのをパパに手伝ってもらっているね。
残念だよ。
「「ええ!? 挨拶!?」」
リリーちゃんもジャックも驚いちゃうよね。
「なんだ? 本気じゃなかったのか? それじゃ、このプリンはオレが食べるか。お? こっちのプリンにはヒヨコの形のアイスクリームが乗ってる!」
食べる気満々だね……
「あの! 本気です! ヒヨコ様、連れて行ってください。オレは……ちゃんとリリーさんの家族に『絶対大切にします』って伝えたいんです」
おぉ……
ジャックは素敵だね。
わたしもクラスの皆もニヤニヤがとまらないよ。




