調理実習ってワクワクするよね(5)
「……濾す? どうして濾すんですか? グスン」
ジャックは今の話に泣いていたんだね。
作り話なのに、なんだか申し訳ないよ。
「……あ、うん。滑らかにする為だよ?」
「なるほど。大切な工程ですね」
ジャックが慎重に濾し始めたね。
「うわあ。ジャックさんは上手ね」
「え? そうかな?」
ジャックとリリーちゃんはもう付き合っているくらい仲良しだね。
「濾し終わったらカップに流し入れて、鍋の底に布を敷いてその上にプリンを置いて……プリンに入らないように鍋にお湯を入れたら蓋をして蒸すよ? あ、蓋から水滴が落ちないように蓋に布を挟もうね。今は魔法石で調理しているから平気だけど、火を使う時は蓋に挟んだ布が燃えないように気をつけてね? 心配だったら蓋に挟む布は無くてもいいよ? 火事は怖いからね」
「はい! 確かに火事は心配ですね。でも、どうして布を敷いた上にプリンを置くんですか?」
「ジャック、良い質問だね。お湯がグツグツするとプリンが動いちゃうからそれをとめる為だよ? ちなみに水がグツグツする事を沸騰するって言うよね? あれは百度になるとグツグツするんだよ? 高い山の上とかでは沸騰する温度は低くなるらしいね。九十度以下でも沸騰するみたいだよ?」
「へぇ……なるほど。そうなんですね。不思議だなぁ。じゃあ、熱々のお茶も、ぬるめのお茶になっちゃうのか……」
「ふふ。こうやって勉強すると楽しいよね。オーブンでも作れるけど、鍋の方が作りやすそうだから今は鍋で作っているの。オーブンで作る時も天板にお湯を入れるけど上から鍋の蓋を被せなくていいからね?」
貧しい領地から来ているクラスメイトもいるみたいだから……
もしかしたらオーブンが無いかもしれないからね。
「え? これで終わりですか? あんなにおいしいのに材料が三つだけなんて……あれ? でもプリンって茶色いのがかかってますよね?」
「うん。さて、じゃあ、次はカラメルを作ろうか。あの甘いカラメルはね、砂糖と水だけでできているんだよ? 不思議だよね」
「え? 砂糖と水だけでもあんな色になるんですか?」
「そうなの。砂糖と半分の水を鍋に入れて……焦がさないように鍋を回すんだよ? ヘラで混ぜなくていいの。ほら、グツグツして色が変わってきたでしょ? そしたらここで火をとめて……残りの水を入れてまた鍋を回せば……はい。カラメルの出来上がりだよ?」
「うわあぁ! 不思議だなぁ……」
「カラメル作りは難しいの。材料はいっぱい持ってきたから失敗しても大丈夫だからね? やけどにだけは気をつけてね?」
「「「はい!」」」
皆真剣に作っているね。
食べさせたい相手がいると頑張れるよね。
「うーん。カラメル作りは難しいですね」
先生もジャック先生の為に頑張っているけど初めてだから難しいみたいだね。
「まだプリンは蒸し終わらないからゆっくり作ろうね。あ……ヒヨコちゃん!?」
ベリアルがピンクのメイド服に白いフリフリのエプロンをつけて生クリームをかき混ぜている!?
昨日先生が作るって言っていた服だよね。
ぐふふ。
約束通りボンネットも持ってきてあるよ?
ばれないようにそっと被せて……
くぅぅ!
堪らないね!
かわいいヒヨコちゃんと真っ白い生クリーム……
ぐふふ。
ずっと見ていられるよ。
クラスの皆もメロメロになっているね。
「ヒヨコちゃんは上手だね」
パパはベリアルが来る前からヒヨコが好きだったからね。
ニコニコしながらボウルを押さえているよ。
「うん! 頑張ってゴンザレスに食べさせたいんだ!」
ぐっふぅ!
あまりのかわいさに膝から崩れ落ちちゃったよ。
おぉ……
クラスメイト数人も膝から崩れ落ちたね。