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調理実習ってワクワクするよね(4)

「ええっと……」


 パパが困っているね。

 わたしはママの子じゃなくて、側室の子って設定だから……

 それってパパがただの女好きの浮気者みたいに見えないかな?

 

「それは、じいちゃんから話そうなぁ」


 吉田のおじいちゃん!?

 いつの間に!?

 確か市場でクロモジの抽出液を売っていたはずだよね?

 おじいちゃんがパパを連れて来てくれたのかな?


「おじいちゃん……えっと……(大丈夫? )」


 優しいパパが誤解されるのはイヤなの。

 でも、上手い嘘が見つからなくて……


 おじいちゃんが優しく微笑んで頷いたね。


「これはニホンじゃ皆知ってる話なんだけどなぁ……ぺるぺるは陛下の兄ちゃんの娘なんだ」


「え? そうだったんですか!?」


 なるほど。

 それならパパが誤解されずに済むね。

 さすが吉田のおじいちゃんだよ。


「ニホンの先代の王様のぺるぺるの父ちゃんは、戦で命を落としてなぁ。王妃である母ちゃんと二人きりになっちまったのをかわいそうに思った陛下は、母ちゃんを側室として迎えたんだ。もちろん『兄ちゃんの妻』として大切にしているんだけどなぁ。優しく誠実な陛下をぺるぺるも本当の父親のように慕ってたんだ」


「そうだったんですか……」


 わたしは聖女ルゥとして最近死んで、神様が授けてくれたペリドットの身体に入った事になっているんだよね?

 辻褄が合わないんじゃないかな?


「そんな時、ぺるぺるが病で亡くなっちまって。それに嘆き悲しんだぺるぺるの母ちゃんまで寝込んじまってなぁ。……神様は、いるんだなぁ。かわいそうに思った神様がぺるぺるにそっくりな女の子を授けてくれたんだ。ぺるぺるの母ちゃんも初めこそ戸惑ったけど、今度こそ娘を幸せにしたいと思うようになってなぁ。それが、まさか聖女様だったとはなぁ」


「それで……神様が授けてくださった身体というわけなんですね」


「そうだなぁ。でも、神様が『聖女様の記憶』と『ニホンのぺるぺるの記憶』を残してくれたから、ここにいるぺるぺるは二人分の記憶があるんだ」


 さすが吉田のおじいちゃんだよ。

 でも、設定がどんどん複雑になっていくね。

 間違えないように気をつけないと……


「ペリドット様……それで……ニホンの家族を苦しめたと思って……傷ついて自分を嫌いになったんですね……」


 リリーちゃんもクラスの皆も悲しそうな顔をしているね。


「あの……えっと……うん」


 余計な事を言っちゃうと、もっと設定が複雑になるから気をつけないと。


「これからは……ずっとずっと幸せに暮らしてください」

「ペリドット様の幸せを願っています」

「あ、じゃあ、婚約者様とは聖女様の時に出会っていたんですか?」


 そういえば、ずっと前に会っていて久々に再会して婚約したって設定だったね。

 確か、人間は記憶操作されていて聖女が魔族の『じいじ』と結婚した事は忘れているんだよね。

 覚えているのは『ルゥ』に近かった人間だけのはず。

 でも、ニホンは魔素で閉ざされていた設定だよね?

 どうしよう……

 でも、これ以上複雑にしたくないし……


「……う……うん。そうなんだよ。あはは……」


 わざとらしくなっちゃったね。


「運命……運命だわ!」


 先生が興奮しながら卵を混ぜているよ……

 あ、そろそろ次の工程に移らないと。


「あはは……じゃあ次は、混ぜていた物を濾していくよ?」


 これ以上話したら辻褄を合わせる為にまた余計な事を言っちゃいそうだからね。

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