調理実習ってワクワクするよね(3)
「皆でプリンを作るって聞いたからパパもお手伝いしたいと思ってね。モモが足りないかと思っていっぱい持ってきたよ? あとは、リンゴとイチゴもね」
パパは本当に気が利くね。
「ありがとう。すごく助かるよ。えへへ。パパありがとう」
「かわいいぺるみの為だからね」
「ママはお留守番なのかな?」
「うん。ハーピ……えっと……そうだね」
パパもママも人間っていう事になっているからね。
種族名で呼ばないように気をつけないと……
「あの……陛下と王妃様はどうやって知り合ったんですか?」
おぉ……
リリーちゃんはお年頃だからそういうのが気になっちゃうんだね。
この質問は、いつかされるかもと思って第三地区の皆と答え方を考えたんだよね。
「そうだね……オレは王で……初めて王妃に会ったのは戦の最中だったんだよ。王妃は敵に追い詰められていてね。そこをオレが助けたんだよ。……その時、オレは王妃のあまりの美しさに心を奪われてね。それからずっと誰にも言わずにその恋心を、隠し続けてきたんだよ」
クラスの女の子達が瞳をキラキラ輝かせながら聞いているね。
「どうして隠していたんですか?」
リリーちゃんは、ぐいぐい来るね。
恋をしているから他人の恋が気になっちゃうんだね。
「あぁ……王妃とオレは種族……あの国が違ってね。結婚するには色々と問題があって。オレは王だし、王妃は次期女王候補だったんだよ」
パパは嘘が苦手だから大変そうだね。
ママは強いから本当に次期ハーピー族長候補だったんだけどね。
「じゃあ、かなり周囲から反対されたんですか?」
「いや……大切なのは当人の気持ちだし、誰からも反対はされなかったんだよ。でも……責任って言うのかな? オレも王妃も、守らなければいけない国民がいるからね。好きっていう気持ちだけで簡単には行動できなくて……だけど結局オレは王妃を諦められなかったんだ。他の誰かに取られたくなくて。だから気持ちを伝えたんだ」
「それで……どうなったんですか?」
リリーちゃんは自分に重ねて聞いているのかもしれないね。
真剣な表情だ。
「王妃も……初めて会ったあの戦の時にオレに恋心を抱いていたと教えてくれたんだ。お互い片想いだと思っていたけど……ずっと両想いだったんだね。もっと早く気持ちを伝えれば良かったよ」
「うわあぁ……すごく素敵ですね」
「ありがとう。毎日オレが育てた花を王妃に贈っているんだよ? 王妃の好きなダリアの花が、国中に咲いているんだ」
「高価な物ではなく心のこもったお花を……素敵です」
「皆は花よりも宝石の方が良いかな? ははは」
「いえ。わたしは宝石なんてもらったら緊張して震えてしまいます。貴族といっても貧乏で……ですが、家族仲が良いのですごく幸せです」
「そうなんだね。一番素敵な事だね」
「……! はい。嬉しいです。わたしはお金よりも大切なものがたくさんあると思っているんです。家族も友達もお金では買えませんから。領地に流れる川も、リスが暮らす木も、何もない所だってバカにされても全部、全部大好きなんです」
「オレも二人の子の父親だからね、そういう話を聞くと嬉しいよ」
「あの……ペリドット様のお母様とはどうやって知り合ったんですか?」
「え?」
おぉ……
パパが困っているね。
この答え方は考えていなかったよ。




