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吉田のおじいちゃんと天界(5)

「んん? お月ちゃんの最期の時にどうして助けなかったのかって事か?」


 吉田のおじいちゃんが走りながら尋ねてくる。


「うーん。それには理由があるはずだから、わたしは訊かないよ? おじいちゃんがあの時、心から傷ついていた事は近くで見ていて知っているから」


「それだけじゃねぇ。じいちゃんはあの時嘘をついたんだ」


「あの時?」


「そうだ。こっちの世界に来てから言っただろ? 『今みたいに風の力を使えていればお月ちゃんを助けられたのに』ってなぁ」


「……それにも理由があるんだよね? だから嘘をつかれたなんて思わないよ?」


「ぺるぺるは人が良過ぎるなぁ。第三地区は皆良い奴ばかりだけどなぁ、外に出れば悪い奴もいるからなぁ。気をつけるんだぞ?」


「うん。気をつけるね」


 第三地区の外には悪い人がいる……か。

 本当にその通りだね。

 気をつけよう。


「で? じいちゃんに何を訊きてぇんだ?」


「魚族長の事なの。産まれてすぐに呪いをかけられて実の親と離れ離れになったらしくて。魚族長のご両親は生きているのかな? 魚族長を捜しているのかな?」


「そうだなぁ。魚族長は今を幸せに生きているからなぁ。今のままでいいんじゃねぇか? 真実を知れば今のまま『魚族長』じゃいられなくなっちまうかもしれねぇぞ?」


「……? 真実を知れば不幸になるっていう事?」


「世の中にはなぁ、知らねぇ方がいい真実もあるんだぞ?」


「……うん」


「ほれ、ウリエルの私室に着いたぞ?」


「あ、うん」


 このドアを開けるのはウリエルが幼女好きだと初めて知ったあの時以来か。

 まだわたしの幼女時代のフィギュアはあるのかな?


「待て、まだ開けるな……」


 ドアに手を伸ばすとおじいちゃんに止められる。


「どうしたの?」


「こっそり覗いてみろ。おもしれぇぞ?」


「おもしろい? ハデスの危機って言っていなかった?」


 ドアを少しだけ開けるとハデスとお父様の話し声が聞こえてくる。


「……だろう?」


「違う……だから」

 

 なんだろう?

 よく聞こえないよ。


「ああ! 触らないでください! 手垢が付くでしょう!」


 ウリエルの怒っている声?

 一体、中で何が起きているの?


「あら? ペルセポネ? 中に入っていなかったの?」


 お母様?

 空間移動してきたんだね。

 便利だなぁ。

 わたしもできるようになりたいよ。


「うん。おじいちゃんがね? おもしろいから覗いてみろって言うから」


「え? おもしろいの? 何がかしら?」


 ヘスティアもいたんだね。


「こっそり覗いてみましょう?」


 ヘラはすごく楽しそうだね。

 

「あれ? ポセイドンは?」


 生きているよね?


「大丈夫よ? あれの事はハデスに任せる事にしたから。執務室でヘスティアの紐で縛られているわ?」

 

 お母様『あれ』って言ったね。

 一応、海の王様なんだよね?

 大丈夫なのかな?


「あんな奴放っておいて、今はおもしろいものを見なくちゃ! うーん。よく見えないわね?」


 ヘラは楽しい事が好きなんだね。


「あ……見える所に出てきたわよ?」


 ヘスティアも楽しそうだね。

 それにしても、初代の神様の孫達がドアの隙間から覗き見なんて……

 しかも、初代の神様も嬉しそうに一緒に覗いているよ……

 わたしもしっかり覗いているけどね。

 確実に親戚だね……

 血は争えないよ。

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