調理実習ってワクワクするよね(2)
「(あの……はい。同じ男爵家の……)」
じゃあ、ジャックが好きな相手って……
「(もしかして、弟がいっぱいいる男爵令嬢の事!? )」
「(……はい。すごく弟思いだなって。だから……いいなぁって)」
「(おぉ! すごくお似合いだよ! あ、でもお互い貴族だから婚約者がいるんじゃないの? )」
「(オレにもリリーさんにも婚約者はいなくて……オレの領地には政略結婚させられるような特別な物は無いし、リリーさんは……その……持参金が出せないらしくて)」
リリーちゃんっていうのか。
かわいい名前だね。
でも……
「(持参金? 何それ? )」
「(嫁入りする時に相手の家門にかなりの額を支払うんですよ)」
「(……? そうなの? 何の為に?)」
「(持参金が少ないと姑からもメイドからも酷い扱いを受けるらしくて)」
「(メイドにまで? )」
「(……はい。だからお嫁に行けない令嬢もたくさんいるんです)」
「(リリーちゃんはジャックの気持ちを知っているのかな? )」
「(知らないと思います。誰にも話していないし……)」
「(じゃあ、チャンスだよ。今からリリーちゃんの隣に行って『できる男』をアピールするんだよ)」
「(できる男……ですか? 何をすれば……)」
「(いつも通りのジャックでいいんだよ? いつも通りのジャックが素敵なんだから)」
「(いつも通りのオレ……)」
「(ほら、早く早く! )」
ジャックがボウルを持ちながらリリーちゃんの隣に行ったね。
二人で仲良く話し始めたよ。
うーん。
見た感じは、すごく仲良しだけど……
実際リリーちゃんはどう思っているのかな?
おっと……
今は調理実習中だったね。
「じゃあ、ヤギのミルクを鍋で温めるよ? 沸騰する前に火を止めるからね?」
工程を説明しないといけないけどジャックとリリーちゃんが気になってソワソワしちゃうよ。
「ミルクが温まったらさっきの卵に少しずつ入れて混ぜるよ?」
「プリンってこうやって作るんだね」
「そうね。家に帰ったら弟達に作ってあげないと」
おぉ!
すごく良い感じだね!
見ているわたしの方がニヤニヤしちゃうよ。
って……
クラスの皆も先生もニヤニヤしながら二人を見ているね。
もしかして、わたし以外は皆ジャックの気持ちを知っていたって事!?
わたしってかなり鈍感なのかも……
「(ペリドット様、やっとお気づきになられましたか? あの二人はお互いを好き同士なのにそれに気づかなくて……見ていてキュンキュンしてしまいます)」
スウィートちゃんの取り巻きだった伯爵令嬢だね。
他の令嬢達もドキドキしながら二人を見ているけど……
「(わたし……全然気づかなかったよ)」
「(だろうな。ぺるみは超絶鈍感だからな。モグモグ)」
ベリアル!?
いつの間にかお昼寝から目覚めたんだね。
……しっかりトッピング用の桃を食べているし。
ゴンザレスも桃をおいしそうに食べているけど、キレイにカットされている?
誰が桃の皮を剥いてくれたのかな?
「ヒヨコちゃん、もっと食べるかな?」
え?
パパ!?
人化したパパがご機嫌で桃を剥いている!?
「パパ!? どうしたの!?」
いつの間に来ていたの!?




