思い出される事の無い記憶~後編~
「ほれ、朝飯食べてアカデミーの支度をしろ?」
おばあちゃんがアカデミーの制服を用意してくれているね。
「ああっ! 遅刻したら大変だ!」
「ははは! 曲がり角には気をつけろ? パンをくわえてぶつかったらそれは恋の始まりだからな」
「ハデスが曲がり角の先にいる人間を消さないように気をつけるよ」
「……ぺるみは……幸せか?」
「え? あはは! うんっ! すごく、すごぉく幸せだよ」
「……そうか、そうか」
……?
おばあちゃんが寂しそうに笑ったような……?
「おい、ぺるみは二度寝か? 早くしないと遅刻だぞ?」
ベリアルがプリプリ怒りながら起こしに来てくれたね。
ぐふふ。
今日も超絶かわいいよ。
「ごめん、ごめん。すぐ起きるよ。……その前にちょっと『ひと吸い』させて……」
「黙れ! 変態め!」
「あぁ……『ひと吸い』がイヤなら『半分吸い』でもいいから……」
「……意味が分からないな。さっさと準備しろよ」
「ああ、待って! じゃあ『四分の一吸い』を……」
「黙れ! 変態っ!」
うぅ……
ちょっとくらい吸わせてくれてもいいのに……
「ははは! ほれ、制服に着替えろ? そうだ。さっき、あげるって言った透け透けの下着を着けてみろ。ハデスちゃんが喜ぶぞ?」
「ハデスが? うーん。見ないと思うけど……おぉ……透け透けだ。大人になった気分だよ」
「ははは! そうだなぁ。尻の所にキャラクターが描いてあるパンツはもう、はかねぇんだなぁ」
「……! それは小さい時の話だよ。あ……」
「ははは! 乳当てがブカブカだなぁ」
「乳当て……そうだね……わたしは……絶壁だからね」
「プッ! 絶壁……じゃあ、中にこのタオルを詰めて……おぉ! すごいなぁ。ここまで膨らむともう詐欺だなぁ」
「……おばあちゃん、これじゃあ制服が入らないよ」
「そうだなぁ。絶壁で採寸したからなぁ……プッ」
「もう! 笑わないの!」
「じゃあ詰め物は取って……よし。ほれ、朝飯を食べようなぁ」
「うん……わたしの絶壁は大きくなるかな?」
「ははは! 毎食ちゃんと食べてよく眠ればすぐになるさ」
「……そういう事なのかなぁ?」
「栄養をいっぱい摂ればすぐだぞ? ほれ、広場で朝飯だ!」
「うん! いっぱい食べて絶壁を卒業するよ!」
「ははは! その意気だ!」
……うーん?
さっき何か大切な事があったような気がするけど……?
思い出せないな……
「そういえば、今朝はまだ吉田のおじいちゃんに会っていないね」
「ん? 晴太郎はリコリス王国の市場に行ってるぞ?」
「え? 市場に?」
「時々、クロモジの木の抽出液を売りに行ってるんだ」
「そうだったんだね」
「……晴太郎は昔から目を離すとすぐにいなくなってなぁ」
おばあちゃんが懐かしそうに話しているね。
幼馴染みだから昔からよく知っているんだね。
吉田のおじいちゃん、市場で変な事をしていないといいけど……
不安になってきたけどもうアカデミーに行かないといけないし。
あぁ……
心配だよ。