思い出される事の無い記憶~前編~
「さて、洗濯物でも干してくるか」
コットスが、ハデスとタルタロスに戻るとおばあちゃんが家に入ったね。
「わたしも手伝う! おばあちゃんは少し休んで? うさちゃんを抱っこしてもらっていいかな?」
「そうか、じゃあばあちゃんはぺるみが干してる姿を見ながらかわいいうさちゃんを撫でるか。ぺるみはすっかり立派なお姉さんになったなぁ」
「えへへ。月海の時からだともう三十歳を超えているからね。お姉さんって言われると恥ずかしいよ」
「ははは! そうか、そうか」
……いつものおばあちゃんだよね?
うーん?
さっきはいつもと違ったような気がしたけど……
「……おばあちゃん? あのさ、さっき……」
コットス達の事をずっと前から知っていたみたいに見えたんだけど……
そんなはずないよね。
何て訊いたらいいのかな?
って、んん!?
何!?
この黒い透け透けの下着は!?
「ん? どうかしたんか?」
「おばあちゃん!? こんな透け透けの下着を着けているの!?」
「ん? 着けてるぞ?」
「……群馬にいた頃はお腹が冷えないようにって、へその上まであるパンツをはいていたよね!?」
「そうだなぁ……でも今は腹も冷えねぇし、晴太郎も喜ぶしなぁ」
「吉田のおじいちゃんが喜ぶ!? うぅ……やっぱり男の人はこういう下着が好きなのかな?」
「ははは! そうだなぁ。天ちゃんに頼んで買ってきてもらった新しい下着があるからなぁ。ぺるみにひとつやろうなぁ。何色がいいんだ? ピンクと白がいいか? 白一色がいいか?」
「え? そんなにいっぱい持っているの? もらっていいの? やったぁ。でも、ハデスに下着姿を見せる事なんて無いからなぁ。って言うよりおばあちゃんは、いつおじいちゃんに下着姿を見せているの?」
「ははは! ぺるみは、まだまだ赤ちゃんだなぁ」
「赤ちゃんじゃないもん!」
「ははは! そうか、そうか。ぺるみは……深く考えなくても大丈夫だ。子供は無事に産まれてくるさ」
「……? おばあちゃん? その話……吉田のおじいちゃんから聞いたの?」
「ぺるみ……」
おばあちゃんが、うさちゃんを抱っこして座っていた椅子から立ち上がって、わたしの所に歩いて来たね。
ん?
あれ?
うさちゃんが魔法石の姿になっている?
どうして……?
「おばあちゃん? うさちゃんが……」
……?
おばあちゃんがわたしのおでこを人差し指で触ったね。
「ペルセポネ……ごめんなさい。これは誰にも知られるわけにはいか……」
え?
あれ……?
おばあちゃんがわたしをペルセポネって言った?
頭がぼーっとして……
よく聞こえな……
「ぺるみ……もう起きねぇとアカデミーに間に合わねぇぞ?」
「……ん? もう朝……?」
すごくよく眠れたよ。
あれ?
ここは……おばあちゃんの布団?
おばあちゃんが優しい笑顔でおでこを撫でてくれているよ。
うさちゃんも、わたしの腕で気持ち良さそうに眠っているね。
「洗濯物を干し終わって横になったらそのまま寝ちまったんだ。疲れてたんだなぁ」
「あれ? そうだったっけ? ……そうだったね……疲れていたんだ……」
……頭が、ぼーっと……する……?
何か変だよ……