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コットスと第三地区(4)

「あれ!? コットス!? どうしてここに!?」


 お父様が大量の生クリームを群馬から買ってきてくれたね。

 こんなに早い時間から開いているお店があるのかな?

 ちゃんとエコバックを持って行って偉いよ。

 でも、本人に言うと調子に乗るから黙っていよう。


「えへへ。コットスは第三地区に遊びに来てくれたんだよ?」


「そうなの? あ、はい。頼まれていた生クリームだよ? 今日はプリンアラモードを作るんだよね? いいなぁ、いいなぁ! お父様も食べたいなぁ」


 ……普通だったらもっとコットスに食いつくと思うんだけど。

 やっぱりお父様は家族にしか興味がないんだね。


「作ったらお父様にも届けるからね?」


「うわあぁい! やったぁ! 缶詰のサクランボを乗せてね? あれがあるとプリンアラモードって感じがするよね。えへへ」


「うん。そうだよね。あのサクランボがいいんだよね」


 お父様とわたしは食の好みが似ているんだよね。


「じゃあ、お父様はお仕事お仕事っと。えへへ。群馬の温泉に行くから頑張らないとねっ! じゃあねぇ」


 お父様は明日の群馬の温泉行きをかなり楽しみにしているみたいだね。

 

「ゼウスは変わらないな」


 コットスは昔のお父様を知っているんだよね。


「お父様は昔からあんな感じなんだね」


「そうだな。姉兄にかなり執着していたようだ。ずっと寂しく暮らしていたようだからな」


「……そうなんだね。本人には訊けないし、訊いたらいけない気がして……」


「そうだな……あの甘ったれが寂しく暮らしていたなんて本人の口からは聞きにくいな」


「そうだね。……時々……お父様のわたしへの愛情が怖い時があるの……」


「……ペルセポネは……オレと同じ力が無いからな。だが……確かにそうだな。姉兄よりもペルセポネに対しての執着の方が酷いようだ。よくハデスとの婚姻を許したな」


「それだけハデスを信頼していたんじゃないかな?」


「……信頼……か。なぁ、ペルセポネ。ゼウスはダメ天族だが、とてつもない神力を持っている。今でこそダメな奴だが……いや、昔からダメな奴だが……怒りに我を忘れて力が暴走したらそれを止められる者はいないだろう。あ……今はヨシダがいるか」


「コットスは吉田って呼ぶ事にしたんだね」


「あぁ……あいつはヨシダとして生きると決めたようだからな」


「……うん。そうだね」


「ペルセポネ……今日は誘ってもらえて良かった。今度は弟を一人ずつ連れて来るつもりだ」


「一人ずつ?」


「タルタロスの仕事があるからな。一人が仕事をしている間、二人は休憩だ。今は休憩中の弟は眠っているはずだ」

 

「そうなんだね。弟さんは来たがらないんじゃないかな?」  


「第三地区の素晴らしさを毎日話せばきっと来てくれるはずだ。時間はかかるだろうがな」


「……そうだね。今までかなり辛い生き方をしてきたみたいだから」


「ペルセポネの言った通りだった」


「え? わたし? 何を言ったかな?」

 

「新しい環境に一歩踏み出すのは難しいが、踏み出してしまえばもっと早くに、こうしておけば良かったと思うものだと」


「あぁ……偉そうだったよね。ごめんなさい」


「いや、ペルセポネの言う通り、もっと早くタルタロスから出るべきだった。弟達にもこんな世界がある事を知らせてやりたい。もう帰ろう。帰って弟達に、ここであった話をしなければ」


 コットスがすごく楽しそうにしているね。


「まあ待て。ほれ、バスケットにおやつを入れておいたからなぁ、弟と食べろ。それから『ばあちゃん達は皆が遊びに来るのを楽しみにしているからな』って伝えてくれ。腹を減らして来るんだぞ? 好きな物をいっぱい作って待ってるからな?」


 おばあちゃんはすごいね。

 コットス達の本当のおばあさんみたいになっているよ。

 でもコットスと弟さんの好きな食べ物が分かるのかな?


「おばあさん、ありがとう。必ず弟と来るから……」


「あぁ。待ってるからな……コットス……」


 ……?

 おばあちゃん?

 なんだろう……

 おばあちゃんは、ずっと前からコットス達を知っていたみたいな感じがしたような?

 コットス達はずっとタルタロスにいたし、おばあちゃんはこの世界に来てからずっと第三地区にいたから会う事は無いはずだよ。

 ……気のせいだよね?

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