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コットスと第三地区(3)

「……そうか。なんとなく分かった気がする」


 コットスは何が分かったのかな?


「ん?」


 おばあちゃんも首を傾げているね。


「皆、オレ達を見ると気味の悪い物を見る目になるのだ。そして、すぐに目を逸らす。でも、ペルセポネもおばあさん達もそうではなかった。冥界では……ペルセポネはオレの心を見てくれている。そう思ったのだ。この醜い容姿を見ないようにしてオレの心を見てくれているのだと。でも……違ったのだな。おばあさん達もオレの容姿を褒めてくれた。腹筋も腕も頭の数も……全く気味悪がりもしないで……ありのままのオレの姿をかわいいと言ってくれたのだ」


「……そう……か」


 ……?

 おばあちゃんの声が震えている?


「異世界にはオレみたいな奴がいるのか? だから怖くないのか?」


「ん? そうでもねぇなぁ」


「え? では、どうしてオレを怖がらない?」


「本当に怖い物を……怖い事を経験してきたから……かもしれねぇなぁ」


「それは……?」


「大切な人との別れ……か? 先に逝かれる事の虚無感、残して逝かなければいけねぇ焦り……とかな。あとは『何よりも大切な家族』を手離さねぇといけなくなった時だ……」


 それって、お父さんとわたしの事……?

 でも、手離さないといけなくなった時って?


「難しくて、よく分からない……」


「それでいいんだ。こんな気持ちを分かったらダメだ。コットス……今のコットスに必要なのは話す事だ。これからは第三地区にちょくちょく遊びに来い」


「え? いいのか?」


「もちろんだ。あと、さっき『オレ達』って言ってたなぁ? 他にも誰かいるんか?」


 ……?

 なんだろう……

 おばあちゃんがいつもと違う感じがする?


「弟が二人いて……」


「何? 弟だと!? その弟二人はよく食べるか?」


「え? あぁ……身体が大きいから……」


「そうか……よく食べているか。よし、次は弟も連れて来い! 腕によりをかけてご馳走を作るからなぁ」


「あ、いや……弟達はタルタロスから出たがらなくて……」


「あの子達も……コットスと同じ思いをしてきたのか……」


 あの子達……?

 おばあちゃん……なんだろう?

 まるでコットスの弟さん達を知っているみたいな言い方だね?


「そうだ……」


「じゃあ、コットスもここに来るのが怖かっただろう……」


「……おばあさん?」


「よく頑張ったなぁ。偉い偉い」


「……! 偉い……オレが偉い?」


「弟達の為に勇気を振り絞って『タル……なんとか』から出て来たんだろう? 偉いぞ?」


「オレが……偉い?」


「でもなぁ……兄ちゃんだからって我慢したり無理するのはダメなんだぞ?」


「え?」


「頑張りすぎはダメだ。兄ちゃんだからって弟の為に犠牲になるのは違うだろ?」


「……それは」


「皆で幸せになればいいんだ」


「弟と一緒に幸せに……?」


「そうだぞ? もう無理しなくていい。ばあちゃん達を頼ればいい。一人で抱え込むなんて絶対にダメだ。オレはぺるみに……月海るみに一人で抱え込ませて……追い込んじまった。もうあんな思いを誰にもさせたくねぇんだ。大切な家族を……もう二度と手離したくねぇんだ」


 ……おばあちゃん。

 そんな風に思っていたなんて……

 でも……やっぱり何か変な感じがするような?


「おばあさん……オレ……辛かった……オレがしっかりしないとって……オレが弟達を守らないとって……」


「もう大丈夫だ。これからは、いつでもばあちゃんが話を聞くぞ? だから……コットスは自分の幸せを考えようなぁ?」


「オレが……幸せになってもいいのか?」


「当然だ。皆、幸せになる権利があるんだ」


「その『皆』の中にオレもいるのか?」


「そうだ。もちろんいるさ。コットス……今までよく頑張った……偉いぞ? 本当に偉いな……」


 おばあちゃんがコットスの腕を優しく撫でているね。

 やっぱり、おばあちゃんはすごいよ。

 おばあちゃんの優しい手はおいしい料理を作るだけじゃなくて、疲れた心も癒してくれるんだ。

 わたしにもいつか子供が産まれたら、こんなステキな母親になれるかな?

 

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