吉田のおじいちゃんと天界(4)
こんな事になるのなら、空間移動の練習をしておけば良かった。
「ギャーー!」
あぁ……
執務室からポセイドンの悲鳴が聞こえるよ。
ごめんね。
生きて待っていてね?
お父様の執務室からウリエルの私室まで吉田のおじいちゃんと一緒に走る。
ハデスの危機って?
あの強いハデスの危機なんだから、きっとすごく強い敵が……
でも、ハデスより強い人なんているの?
うーん。
そういえば、お父様も一緒にいるんだよね?
お父様は神様なんだし、強いはずだよね?
まさか、お父様と兄弟喧嘩をしているとか?
……どう考えてもハデスの方が強そうだよね?
ん?
でも、本当に危機だったら吉田のおじいちゃんが空間移動してくれるんじゃないかな?
「んん? そうだなぁ。最近ぺるぺるは運動不足だろう? 鍛錬もしてねぇしなぁ。前までは毎日鍛錬してただろ?」
心の声を聞いたのか。
うぅ……
そうなんだよね。
ルゥの時は毎日、鍛錬していたけど今は……
ずっとお菓子を食べてお茶を飲んで遊んでいるだけなんだよね。
だから今、走らせているっていう事かな?
「そろそろ鍛錬でも始めてみたらどうだ? もう一回精霊達と契約するとかなぁ?」
「精霊と契約? 天族に戻ったけど契約してくれるかな?」
「ぺるぺるは精霊に好かれてるからなぁ。お願いすれば大丈夫だろう?」
「うん……そうだといいけど。でも精霊達はわたしの神力をそれぞれの力に変換してくれるんだよね?」
「そうだぞ?」
「今までルゥの時も聖女の神力を変換してもらっていたけど、今は天族に戻ったでしょ? 気をつけないと神力が強過ぎて変換する時に暴走しちゃうんじゃないかな?」
「そうだなぁ。その辺りはハデスちゃんに訓練してもらえばいいんじゃねぇか?」
「え? ハデスの……訓練? うぅ……地獄の鍛錬」
「ははは。鍛錬の島じゃ大変だったみてぇだからなぁ」
「うん。生きているのが不思議なくらいだよ」
「空間移動はできた方がいいぞ? 翼は飾り物みてぇな物だから飛ばなくてもいいけどなぁ。自分で天界と第三地区に行き来できりゃあ楽だろう? 今みてぇに誰かを助けに行きてぇ時に走って行くんじゃ大変だからなぁ」
「その通りだね。わたし、ずっと甘やかされていたからこれからは頑張らないと。でも、数千年前のペルセポネの身体だった時は少し歩くだけでも息切れしていたけど今は全然平気だよ?」
「ファルズフの薬を飲んでねぇからなぁ」
「あの薬でわたしを押さえつけていたんだね」
「そうだなぁ。ぺるぺるは元々頑丈な身体だったんだぞ?」
「じゃあ、やっぱり先天性獣なんとかっていう病気は無かったんだね」
「そうだなぁ。全部ファルズフの欲が起こした事だったんだ……(欲……か……)」
「っていう事は今、わたしが一時間モフモフに触らないと禁断症状が出るのはファルズフが最期の時に呪いをかけたからなんだね」
「そうだろうなぁ。でも、その呪いの解き方をぺるぺるはもう知っているんだぞ?」
「え? わたしが知っているの? ……知らないと思うけどなぁ」
「この世に起こる全ての事には理由があるんだ。よーく思い返してみろ?」
「……? うん。思い出してみるよ。あ、そうだ。おじいちゃんに訊きたい事があったの」
初代の神様のおじいちゃんなら知っているかも。