コットスと冥界で(6)
「……そっか。第三地区でしょっちゅう会う事になるだろうし。気まずくないかな?」
コットスは、吉田のおじいちゃんとは色々あったからね。
「……あいつはずっと話しかけてくれたからな。初めこそバカにするなと思ったが……ペルセポネの言う通りだ。誰かに好きだと……大切だと言われるのは気持ちがいいものだ」
すごく穏やかな表情だね。
「うん。そうだね」
「ところで、花の手土産は薄気味悪くないか?」
「え? すごく素敵だと思うよ?」
「……そうか。良かった。手土産なんて初めてだからな。良く分からなくて……」
「ふふ。前にいた世界では、よく花のプレゼントをしたよ? 『ありがとう』とか『よろしくね』とか、いろんな気持ちを込めてね」
「気持ちを込めて……? そうか。オレは……怖く見えないか? 第三地区の者達は怖がらないだろうか」
「ふふ。絶対に大丈夫だよ? 皆とはすぐに仲良くなるはずだよ?」
「……そうか。オレは……意気地無しだな。化け物と言われそうで怖いのだ」
「……今まで出会ってきた酷い人達とは全く違うはずだよ? ……誰でも、一歩踏み出す時は怖いんだよ? でも、一歩踏み出してみたら意外に大丈夫だったりするんだよね。もっと早くこうしておけば良かったって思ったりしてさ……」
「……そうなのか」
「へへ。そういう時は……はい!」
「え?」
「手を繋ごう?」
「手を? なぜだ?」
「ハデスはわたしが不安になると手を繋いでくれるんだよ? そうすると、ハデスの温かい大きい手に安心するの」
「安心……?」
「わたしの手は小さいけどホカホカで温かいから……はい! 手を繋ごう?」
「……本当にペルセポネには敵わないな。その小さな手を握りつぶさないようにオレの人差し指を握ってくれ」
「ふふ。わたしも力持ちだから握りつぶされたりはしないけど……」
コットスの人差し指は大きくて……でも……少し震えているね。
怖いのは当然だよ。
今まで、それだけ酷い思いをさせられてきたんだから。
虐げられて傷つけられてきたんだよね。
「では、わたしもコットスの人差し指を握ろう」
ハデスも……?
ふふ。
ハデスは不器用だけどすごく優しいから、コットスの事が心配なんだね。
「ははは! そうか。ハデスはそんなにオレの指が握りたいか!」
コットスはハデスの心の声が聞こえているんだよね?
わたしには聞こえないけど、きっとハデスの心はコットスを心配しているはずだよ。
「えへへ。嬉しいな。また一人家族が増えたよ?」
「家族?」
コットスが聞き返してきたね。
「うん。わたしにはね、いっぱい家族がいるんだよ? 人間にも、第三地区の皆も魔族の皆も、天族のお父様とお母様達も……皆家族なの。コットスも家族だよ? 大切な家族なの」
「……本当に……ペルセポネには敵わないな……」
これからは、コットスが毎日笑顔で暮らせたらいいな。
誰からも虐げられずに、楽しく穏やかに暮らせたら……
きっとそうなれるよ。
だってコットスはこんなに優しくて素敵なんだから。




