コットスと冥界で(5)
「ん……?」
あれ?
コットスとお花見をしていたのは夢だったのかな?
いつの間にかベットで眠っていたみたいだね。
隣にはハデスが気持ち良さそうに眠っているけど……
いや、違うね。
間にしっかりうさちゃんが潜り込んでいるよ。
「オキタカ」
「うさちゃんおはよう」
「マダ、カナリ、ハヤイ、ジカンダガ……アノ、コエデ、オキタカ」
「あの声?」
「おーい! ハデス! ペルセポネ! 約束の時間だぞ!」
あの声は……
外から聞こえてくるけど……
「コットス? 夢じゃなかったんだ。ハデス、起きて? コットスと第三地区に行く時間みたいだよ?」
コットスは大きいから城に入れないんだね。
あ、そうだ。
コットスは心の声が聞こえるんだった。
コットス、おはよう。
わたし心の声が聞こえるかな?
って言ってもわたしにはコットスの声が聞こえないんだよね。
ハデスを起こしたらすぐに行くね?
「ハデス、起きて?」
「ん……ペルセポネ……眠れたか?」
「うん。わたし、外で寝ちゃったんだね。ベットに運んでくれてありがとう」
「あぁ……もう時間か。では、第三地区に行くか」
ハデスはまだ眠そうだね。
「エイエンニ、ネテイレバ、イイノニ」
うさちゃん……!
なんて恐ろしい事を!
「今、なんと言った? 子ウサギめ」
「マダマダ、ハデスハ、アカゴ、ダカラ、シカタナイナ」
赤子?
赤ちゃんって事だよね?
まあ、確かにうさちゃんの方が先に産まれてはいたみたいだけど……
「赤子? このわたしが? 子ウサギめ……」
「セイカク、サイアク、オトコメ」
この二人は……子供のケンカみたいだね。
「ははは!」
外からコットスの笑い声が聞こえてきたね。
今の話が聞こえていたんだね。
「はいはい。二人とも、コットスが待っているからね? もう行こうね?」
まさか、ずっとこんな感じじゃないよね?
「オレハ、ペルセポネニ、ダッコ、シテモラウ。ハデスハ、アルケバ、イイ。ジメンヲ、ハイツクバレバ、イイ」
「くっ! 子ウサギめ……ペルセポネのペットでなければ息の根を止めてやるのに……」
ハデスが普通に怖い事を言っているね。
「ヤレルモノナラ、ヤッテミロ」
「言ったな? 今日こそどちらが上か、分からせてやろう」
……どう見てもかわいいウサギちゃんをハデスが虐めているようにしか見えないけど、先にケンカを仕掛けているのは毎回うさちゃんみたいだね。
長い廊下を歩いて外に出るまでの間、ずっとケンカをしているつもりかな?
「はいはい。二人とも、コットスが待っているからね。あ、いた! コットスおはよう」
外に出るとコットスが花を抱えて待っているね。
「ペルセポネも大変だな! ははは!」
「すごくキレイな花だね。もしかして、第三地区の皆へのお土産かな?」
「あぁ……あいつが……ウラヌ……ヨシダがお呼ばれする時は手土産が必要だと教えてくれてな」
「タルタロスで話をしたんだね」
「あぁ……あいつはこれからもヨシダとして生きていくらしい」
「……そう。コットスは……それでいいのかな?」
「元々親などとは思っていなかったからな。どうなろうが知ったこっちゃないが……別に……心底嫌いな訳じゃない……からな」
やっぱり心から嫌いな訳じゃないんだね。