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コットスと冥界で(3)

今回はハデスが主役です。

「……コットス……コットスは化け物じゃないし、心が無いなんて絶対にあり得ないよ。だってさっきまでは一緒に笑って……今はすごく辛そうな顔をしているよ? 心は皆が持っているんだよ?」


 ペルセポネが、ゆっくりと優しい声でコットスに話しかけているな。


「……心……オレの心?」


「コットスの心は自分を『化け物だ』って思う事でタルタロスにいる事を納得しようとしていた……のかな?」


「え?」


「わたしは何度でも言うよ? 家族がわたしに何度も好きだよって言ってくれたように……コットスは化け物じゃない。コットスは優しくて楽しいお兄ちゃんだよって」


「……ペル……」


「……? コットス?」


「なんと言ったか……」


「え?」


「ペル……」


「ペルセポネだよ? でも、長いから『ぺるみ』でいいよ?」


「いや……ペルセポネと呼ぼう。ペルセポネはオレの心を……本当のオレを見てくれた。名が長いからと覚えないのは失礼だ」


「ふふ。コットスは真面目なんだね」


「真面目? オレが? そんな事は初めて言われたな」  


「それだけじゃないよ? コットスは声も優しいし話していてすごく楽しいよ?」


「……そんな風に言われた事は今まで無かったが」


「これからは会うたびにコットスの素敵なところを教えるね?」


「……そうか。オレの素敵なところ……か。第三地区……行ってみるか……こんな風に育てたおばあさんや、ゼウスとデメテルにも久々に会いたくなったからな」


「うわあぁ! 皆喜ぶよ! 第三地区の皆はすごいんだよ? 会ったらきっと驚くよ。皆、物知りでパワフルで。わたしなんて全然敵わないの」


「なに? そんなにすごいのか。ははは! それは会うのが楽しみだ」


 すごいな。

 コットスはタルタロスから出る事をずっと拒んでいたのに、ペルセポネは出会ってすぐに心を開かせたのか。

 ペルセポネ自身も自分を好きになれない時期があったからな。

 コットスもそれを知って、ペルセポネのように自分も変わりたいと思ったのかもしれない。

 わたしもゼウスも、あの戦の時にコットスとその弟達に助けられたというのにずっと放置してしまっていたからな。

 これではただ利用していただけだと思われても仕方ない状況だというのに、コットスはわたしを責めなかった。

 わたしは自分が恥ずかしい……

 コットスが第三地区に行きたいと言うのなら協力しなくては。


「では、明日……もう日付が変わったから、今日にでも行ってみるか? いや、心の準備が必要か……もう少し後にしてみるか?」


「ハデスは、なかなかせっかちだな! ははは! 先延ばしにすると怖じ気づきそうだ。オレの休憩時間は昼前までだからな。それまでに帰って来るとするか」


「そうか。では……第三地区の者達は早朝から活動しているから、あと二時間したら行ってみるか」


「……そうだな。第三地区の者達の反応は正直心配だが……ペルセポネが信頼する者ならば……オレは思ったのだ。いつまでも逃げるように隠れて暮らしたくはないと。ペルセポネに言われて……背中を押されて……一歩踏み出してみようと思えたのだ。弟達の為にも、オレが一歩先に出て、外の世界はそれほど悪い所ではないと知らせたい」


「そうか。勇気を出したのだな。第三地区の者達は驚くほど自由で快活だ。きっとコットスも驚くであろう」


 コットスは弟思いだからな。

 弟達の為に勇気を振り絞ったのだな。

 もしかしたら……

 ペルセポネの魂がコットスの兄弟だから、ペルセポネの言葉に心が揺さぶられたのか?

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