コットスと冥界で(1)
今回はハデスが主役です。
「ははは! そうか。ペルセポネは異世界とやらでおばあさんと二人で暮らしていたのか」
コットスは上機嫌だな。
かなり強い酒を大量に飲んでいるが大丈夫だろうか。
「うん。でも、田中のおじいちゃんの姿だったお父様と、吉田のおじいちゃんの姿だったウラノスおじい様が、ずっと一緒にいてくれたから寂しくなかったよ?」
「ウラノス……か」
「……コットスは……ウラノスおじい様の事が……」
「……」
コットスがペルセポネを見つめて黙ってしまったな。
ペルセポネはヨシダさんを嫌いなのかと問いたいのか?
コットスは産まれてすぐに捨てられたのだ。
今さら嫌いなのかと問う必要もないであろう。
「コットスは……ウラノスおじい様の事を心から嫌いになれないんだね」
……?
ペルセポネ?
コットスはヨシダさんを嫌っているはずだが。
「なぜそう思う?」
コットスの声が震えているな。
「うーん。今までコットスと会った事は無いし、わたし自身遥か昔の魂の記憶は無いけど……兄弟だからかな? なんとなく、そんな感じがするの」
「……そうか。そうだな。確かに嫌いではあったが……赤ん坊の頃にこの容姿のせいで捨てられたのだからな。だが……捨てられずにずっと天界にいたら……」
「そうだね。天族達はコットス達を迫害しただろうね。天界はそういう所だから」
「だろうな。今よりも傷ついていただろう……最近になって……話しかけてくるようになってな」
……?
話しかけてくる?
ヨシダさんが?
タルタロスには冥界からしか行けない。
冥界に出入りするには入門申請書が必要だがヨシダさんはそれを提出していない。
タルタロスに行けるはずが無いのだが……
……なんだ?
ペルセポネがコットスをじっと見つめている。
コットスがペルセポネを見て頷いた……?
「わたし……ね? ハデスとの赤ちゃんが欲しいの。ハデスがヴォジャノーイ族の『じいじ』だった時から『じいじ』にそっくりな赤ちゃんが来てくれたら嬉いなって思っていたの」
「……『ヴォジャノーイ族』とは魔族なんだろう? 魔族に似た赤ん坊が欲しい? そんな事はあり得ない。ぺるみはその時、人間の姿だったんだろう? 魔族は……オレみたいな化け物の容姿のはずだ」
「魔族は化け物なんかじゃないよ? ヴォジャノーイ族はカエルと人間を足したみたいなかっこいい容姿で、皆すごく優しいの。パパはオーク族で筋肉がムキムキで、でもいつもわたしを優しく撫でてくれるんだよ? ママはハーピー族で、わたしがルゥだった時はフワフワの羽毛で抱っこして寝てくれたの」
「……気持ち悪くは、なかったのか? 恐ろしくは、なかったのか?」
「え? あはは。自分の家族を気持ち悪いなんて思うはずがないよ。あ、でも食べられちゃうかもって思う時はあったけどね」
「オレは……気持ち悪いだろう? こんな……頭も腕も大量にあって……」
「誰かにそう言われたの?」
「言われなくても……自分でも分かるさ。普通は腕は二本で頭はひとつだからな」
「……誰がそう決めたのかな? 普通って何? 頭の数も腕の数もそんなのは関係ないよ。本当に大切なのは……」
「……!」
ペルセポネがコットスの腕のひとつに抱きついた?
コットスが驚いた顔をして固まっているな。
今まで出会ってきた者は皆気味悪がって触れるどころか目も合わせなかっただろうからな。